膝軟骨のすり減りとは?原因・症状・診断チャートでわかる受診の目安

年齢を重ねるにつれて、膝の痛みが気になったり、階段の上り下りがつらくなったりといった悩みは増えていきます。その原因のひとつが、膝軟骨のすり減りです。テレビCMで耳にしたことがある方も多いでしょう。
「もしかして、自分も膝軟骨がすり減っているのでは?」
そう不安に感じている方も少なくないはずです。
そこで今回は膝軟骨のすり減りをテーマに、膝軟骨がすり減っているとはどのような状態なのかをはじめ、原因と対処法について解説します。膝軟骨がすり減っているかどうかを見極めための診断チャートも掲載しているので、ぜひ参考にしてください。
この記事の監修者

告野 英利
ほねなび整形在宅クリニック院長
浜松医科大学医学部卒業後、日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院、名古屋大学医学部附属病院、八千代病院にて整形外科医として勤務。診療を通じて多くの骨粗鬆症患者が苦しんでいる現状を目の当たりにし、根本解決を目指した啓発活動に注力。現在は株式会社Curelity 代表取締役兼ほねなび整形在宅クリニック院長として地域医療に携わる。
本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨しているわけではございません。
そもそも膝軟骨とは
まずは、膝軟骨に関する基本知識についてみていきましょう。
膝関節の構造と膝軟骨の位置
膝の関節は、「大腿骨(太ももの骨)」「脛骨(すねの骨)」「膝蓋骨(お皿の骨)」によって構成されています。これら3つの骨の表面を覆うように存在しているのが膝軟骨です。

膝軟骨の役割
膝軟骨の役割は主に以下の3つです。
- 骨同士が直接ぶつかるのを防ぐ
- 衝撃を吸収し、関節への負担を和らげる
- 関節の動きを滑らかにする
特に歩行や階段の上り下りでは、膝に体重の数倍もの力がかかります。膝軟骨は、その負担を分散させるクッション材のような役割を果たしてくれているのです。
膝軟骨がすり減るとはどのような状態か
では、膝軟骨がすり減るとはどのような状態なのでしょうか。
端的にいうと、少しずつ傷み、薄くなっている状態です。一気に悪化するのではなく、段階的に進行します。
膝軟骨がすり減っていく過程をみていきましょう。
軟骨の表面が荒れてくる
健康な膝軟骨は、表面がなめらかで弾力があり、ツルツルしています。しかし、加齢や負荷の蓄積によって、表面に細かな傷やざらつきが生じてきます。
この初期段階では、とくに痛みはありません。日常生活にも支障はないため、自覚のないままに進行していきます。
クッション性(弾力)が低下する
膝軟骨は水分を多く含み、その弾力によって衝撃を吸収しています。しかし、すり減りが進むと水分量が低下し、クッション性が落ちていきます。
歩行や階段を上り下りする際の負担が膝に伝わり、膝に違和感や軽い痛みが出ることも少なくありません。
軟骨が薄くなる
さらにすり減りが進行すると、軟骨の厚みが減少し、部分的に欠けたり剥がれたりします。膝軟骨が薄くなることで骨同士の距離が縮まり、摩擦や炎症が起こりやすくなります。
この段階になると、はっきりと痛みが出るほか、腫れを伴うこともあります。膝軟骨のすり減りが恐いのは、この段階にならないと症状を自覚できないことにあります。早い段階で自分の膝の状態に目を向け、適切に対処しましょう。
膝軟骨のすり減り=変形性膝関節症ではない
膝軟骨のすり減りについてWebで検索をすると、「変形性膝関節症」が同じ意味のように使われているのを目にします。しかし、この2つは厳密には異なるものです。
膝軟骨のすり減りは、膝関節の中で起きている、軟骨が傷んだり薄くなったりする状態や変化のこと。一方の変形性膝関節症は、痛みや動きの制限、レントゲンなどの画像所見をもとに医師が診断する病名です。
つまり、膝軟骨のすり減りは、変形性膝関節症に至る原因や進行過程の一部ですが、軟骨がすり減っているからといって、変形性膝関節症とは限らないのです。そのため、膝軟骨がすり減っている場合もすぐに病気と決めつけるのではなく、状態に応じたケアや経過観察を行うことが重要となります。
膝軟骨がすり減る主な原因
では、なぜ膝軟骨はすり減ってしまうのでしょうか。その主な原因をみていきましょう。
加齢
膝軟骨のすり減りが起こる代表的な原因のひとつが、加齢です。肌が年齢とともに変化するのと同じように、膝軟骨も年齢を重ねるにつれて水分量や弾力が徐々に低下していきます。
加齢そのものは避けられませんが、日常生活の工夫によって、すり減りの進行を緩やかにすることは可能です。
体重増加
当然ですが、体重が増えるほど膝にかかる負担は大きくなります。負担が大きくなると、普段の歩行や立ち座りの積み重ねによって、膝軟骨の摩耗が進みやすくなります。
体重増加そのものがすぐに痛みを引き起こすわけではありませんが、年齢とともに体重も増えやすくなるので、体調管理には気を遣うようにしましょう。
姿勢・歩き方・骨格
O脚やX脚といった骨格に特徴がある場合、膝関節にかかる力が均等に分散されにくくなります。膝の一部分に負担が集中し、軟骨がすり減りやすくなることがあるのです。
また、歩き方や立ち方の癖も影響します。無意識の体の使い方が、長い時間をかけて膝軟骨への負担を増やしているケースは少なくありません。
運動や仕事による過度な負荷
ジャンプや急停止を伴うスポーツ、長時間の立ち仕事、重い物を扱う作業などは、膝に大きな負担をかけます。適度な運動は健康にとって重要ですが、負荷と休息のバランスが取れていないと、膝軟骨へのダメージが蓄積していきます。
とくに十分な休息が取れない状態が続くと、軟骨の回復が追いつかず、すり減りが進行しやすくなります。
過去のケガや手術歴
半月板損傷や靱帯損傷など、過去に膝をケガした経験がある場合、治癒後も膝関節の動きやバランスが変化していることがあります。そのズレが原因で膝に偏った負担がかかり、結果として軟骨のすり減りを招くことがあります。
ケガが治ったあとも膝の使い方や違和感には細心の注意を払うことが大事です。
膝軟骨のすり減りによって起こる症状
では、実際に膝軟骨がすり減るとどのような症状が現れるのでしょうか。
膝軟骨のすり減りは、初期・進行期で症状の出方が大きく異なるのが特徴です。ここでは、症状の現れ方を段階ごとにみていきましょう。
初期に現れやすい症状
膝軟骨のすり減りが始まったばかりの段階では、強い痛みが出ないことは少なく、「ちょっとした違和感」として現れるケースがほとんどです。
代表的な症状には、以下のようなものがあります。
- 動き始めの違和感
- 階段の下りでの痛み
- 正座やしゃがみ動作のしづらさ
とくに多いのが、動き始めに感じる違和感です。朝起きて歩き出すときや長時間座ったあとに立ち上がる際に膝がこわばるような感覚やスムーズに動かしにくい感覚が出ることがあります。
また、階段は上るときよりも下りるときに痛みを感じやすいのも特徴です。体重が膝に強くかかる動作であるため、膝軟骨への負担が大きくなるからです。
ほかにも、正座をしたり、しゃがんだりする際に、膝に突っ張る感じや痛みを覚えることがあるのも初期症状といえます。
これらの症状は、しばらくすると治まることも多いため、一時的な疲れや「年齢のせい」として見過ごされやすいため注意しましょう。
進行すると現れる症状
膝軟骨のすり減りが進行してくると、症状は一時的な違和感では済まなくなり、痛みや不調が日常的に現れるようになります。
進行期にみられやすい症状には、以下のようなものがあります。
- 痛みの頻度・強さが増す
- 膝の腫れや熱感が出る
- 膝の曲げ伸ばしがしにくくなる
初期のころは動いたときだけだった痛みが、次第に動作のたびに感じるようになり、痛みの出る回数や強さも増えていきます。
また、関節内に炎症が起こることで、膝が腫れたり、熱っぽく感じたりすることもあります。
夕方になると膝が重だるく感じる、ズボンがきつく感じるといった変化として自覚されることも少なくありません。
さらに進行すると、膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、歩行や階段の上り下り、立ち座りといった日常生活の動作に支障が出始めます。
ここまでくると、早めに医療機関を受診し適切な対処をしましょう。
見逃されやすい注意サイン
膝軟骨のすり減りは、初期症状では気付きにくいだけでなく、ある程度進行した後でも見過ごしてしまうことが多いのが厄介なポイントです。
とくに注意したいのは、以下のようなケースです。
- 痛みが出たり引いたりを繰り返す
- 片膝だけに症状が出る
痛みが出たり引いたりを繰り返す場合、「痛みが治まったから大丈夫」「少し休めば良くなる」と考えてしまいがちです。しかし、放置しているうちに膝軟骨のすり減りが静かに進行していきます。
また、片側の膝だけに違和感や痛みが出る場合でも、体の使い方や骨格の影響で特定の膝に負担が集中しているケースが珍しくありません。
膝の痛みは症状が軽い、片側だけだからといって安心せず、注意深く経過をよく観察するようにしましょう。
放置するとどうなるか
膝軟骨のすり減りをそのまま放置してしまうと、以下のようなリスクが高まります。
- 痛みが慢性化しやすくなる
- 歩行や階段動作など、日常動作の制限が増える
- 変形性膝関節症へ進行するリスクが高まる
前述したように、初期の段階では多少の痛みがあっても様子を見てしまいがちです。しかし、進行すると痛みが慢性化し、外出や運動を控えるようになり、日常生活の動きも知らず知らずのうちに制限されてしまいます。
変形性膝関節症へ進行するリスクもあるので、早い段階で適切に対処をすることが肝心です。
膝軟骨のすり減り診断チャート
ここまで読んできて、「自分の膝は大丈夫だろうか」と不安に感じている方は多いでしょう。
先述したように、膝軟骨のすり減りは痛みが強く出る前の段階では判断が難しく、気づかないまま進行してしまうケースも少なくありません。
そこでここでは、現在の膝の状態を確認するための診断チャートを用意しました。以下のチェック項目に該当するものをチェックし、適切な処置を行ってください。

この診断チャートは、あくまでセルフチェックの目安です。強い痛みや明らかな腫れがある場合は、チェック結果に関わらず早めに医療機関を受診してください。
膝軟骨のすり減りの予防・対処法
膝軟骨のすり減りは、自然に治るものではありません。しかし、工夫次第で進行を抑え、症状を和らげることはできます。
ここでは、膝軟骨のすり減りを予防・対処する方法を解説します。
そもそも膝軟骨は元に戻るのか
膝軟骨は血管がなく、栄養が届きにくい組織であるため、一度すり減った軟骨が自然に再生することは、基本的に難しいです。そのため、これ以上すり減らさないようにすることが重要となります。
予防法
まずは膝軟骨のすり減りを予防する方法からみていきましょう。
膝への負担を減らす
当たり前のことですが、まず意識したいのが「膝にかかる負担を減らすこと」です。
たとえば、日常生活の中で以下のような意識を持つことが大切です。
- 長時間の立ちっぱなし・歩きっぱなしを避ける
- 階段や坂道を無理に繰り返さない
- 痛みや違和感がある日は、無理に動かさず休ませる
運動自体を控えるべきではないかと考える方もいますが、それは逆に健康的ではありません。無理のない範囲で運動は行いましょう。
体重を管理する
体重と膝への負担は密接に関係しており、歩行時には体重の2~3倍、階段を下りる際には体重の約5倍の負担が膝にかかっているといわれています。
逆に言えば、数kgの減量でも膝への負担は確実に軽減できるのです。急激な減量を目指す必要ないので、無理のない範囲で体重管理を意識していきましょう。
ダイエットの基本については「ダイエットのための食事における7つの基本〜気を付けること&おすすめメニュー〜」で詳しく解説しています。
膝を支える筋肉を鍛える
膝そのものを鍛えることはできませんが、膝を支える周囲の筋肉を強化することで、関節への負担を軽減することができます。
とくに重要なのは、「大腿四頭筋」と呼ばれる太もも前の筋肉とお尻の筋肉です。スクワットやヒップリフトと呼ばれる筋力トレーニングがおすすめです。
太ももやお尻の筋肉を鍛えるスクワットをはじめ、ダイエットに効果的な筋トレについては「痩せるには運動は本当に必要??運動嫌いのためのおすすめメソッド」で詳しく解説しています。
対処法
膝軟骨のすり減りが進行した場合の対処法は主に2つあります。
サポーター・インソールの活用
膝サポーターやインソールは、関節のぐらつきを抑えたり、足裏からの衝撃を和らげたりする補助具です。これらは治すためのものではありませんが、日常生活を楽にし、膝への負担を減らすサポート役となるため、痛みが強い日や長時間歩く際などは活用しましょう。
医療機関での治療・手術
症状が続く場合や日常生活に支障が出ている場合は、医療機関での治療を検討しましょう。膝の状態や症状の程度に応じて、薬物療法や注射による治療が行われるほか、治療を続けても症状の改善がみられない場合は手術が検討されます。
やってはいけないNG行動
膝軟骨のすり減りが疑われる場合、以下のような行動は避けましょう。
- 痛みを我慢して運動を続ける
- 年齢のせいにして放置する
- 自己判断で強いストレッチを行う
これらはかえって膝への負担を増やし、症状を悪化させる可能性があります。繰り返しますが、痛みや違和感が続く場合は自己判断で我慢せず、早めに専門家に相談することが大切です。必要に応じて医療機関の力も借りながら、膝と上手につき合っていきましょう。
よくある質問
最後に、膝軟骨のすり減りに関するよくある質問にお答えします。
膝が鳴るのは軟骨がすり減っているからですか?
A. 必ずしもそうとは限りません。
膝の音は、関節内の気泡がはじけるときや腱や靱帯が動くときなど様々な原因で鳴ります。ただし、痛みを伴う場合は膝軟骨のすり減りや関節内のトラブルが関係している可能性もあるため注意しましょう。
膝軟骨のすり減りにサプリメントは有効ですか?
A. 有効な場合もありますが、サプリメントだけで治すことはできません。
膝関節の健康をサポートするのに有効な成分として知られる、グルコサミンやヒアルロン酸が配合されたサプリメントは膝軟骨のすり減りの予防に効果的な場合もあります。ただし、サプリメントはあくまでも補助的な役割に過ぎず、すり減った膝軟骨を完全に元に戻す効果があるわけではありません。
サプリメントはあくまで生活習慣の改善や対処法と併用するものと考えて活用しましょう。
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