【医師監修】子どもの身長が伸びない理由とは?低身長の原因と対策

成長コラム

「我が子にはすくすくと育ってほしい」と考えるのは、保護者共通の思いでしょう。

それだけに「身長の伸びが遅いのではないか」と感じたときには、誰でも不安になります。

そこで今回は、まず身長が伸びない理由について解説します。

そのうえで、身長を伸ばすためにご家庭でできることをご紹介します。

乳・幼児期から小学生・中学生・高校生と年代別の対策もまとめました。お子さまの身長が伸び悩んでいる方は、ぜひご参考ください。

 この記事の監修者

 

杉山 伸子

由良産婦人科・小児科医

京都大学医学部卒業。卒後20年間、産婦人科医として臨床経験を積む。2017年、女性の健康リテラシー向上を目指す団体「Mimosa」を立ち上げる。講演やコラム執筆実績多数。YouTubeでリプロダクティブ・ヘルスに関する情報提供動画を配信中

目次

 「低身長」の基準をまずはチェック

はじめに低身長の基準をチェックしていきましょう。以下に低身長の目安を表でまとめました。お子さまの年齢、性別と照らし合わせてみてください。表に記された身長を下回る場合には、医学的に低身長だといわれます。

年齢 男子 女子
0歳0か月 44.7cm以下 44.2 cm以下
0歳6か月 63.1cm以下 61.6 cm以下
1歳0か月 69.8cm以下 68.4 cm以下
1歳6か月 74.9cm以下 73.9 cm以下
2歳 79.4 cm以下 78.4 cm以下
3歳 86.4 cm以下 85.5 cm以下
4歳 92.5 cm以下 91.9 cm以下
5歳 98.1 cm以下 97.7 cm以下
6歳 103.8 cm以下 103.4 cm以下
7歳 109.5 cm以下 108.8 cm以下
8歳 114.7 cm以下 113.9 cm以下
9歳 119.7 cm以下 118.8 cm以下
10歳 124.5 cm以下 123.9 cm以下
11歳 128.9 cm以下 130.2 cm以下
12歳 133.9 cm以下 137.0 cm以下
13歳 140.7 cm以下 142.3 cm以下
14歳 148.6 cm以下 145.3 cm以下
15歳 154.7 cm以下 146.5 cm以下
16歳 157.7 cm以下 147.1 cm以下
17歳 158.8 cm以下 147.4 cm以下

※医学的にいわれる低身長とは、平均身長を元にした身長標準偏差スコアが「-2.0SD以下」のことを指し、上表は丁度-2.0SD以下にあたる身長を示したものです。

※上表の元となっているデータは厚生労働省発表による「2000年度標準身長・標準偏差表」です。現在とは少し誤差がありますが、ここ10数年ではどの世代も平均身長がほぼ変わっていないため、十分参考に値するでしょう。

 子どもの身長が伸びない理由とは?~考えられる原因~

身長が伸びない理由①遺伝や体質
身長における個人差の8割程度が遺伝によるものだと報告されているほど
②生活習慣の乱れ
身長を伸ばすためには、十分な栄養と睡眠、それから適度な運動が必要です。
③ストレス等精神的なもの
ストレスにより成長ホルモン分泌が阻害されれば、低身長になる恐れがあるでしょう。
④病気
身長が伸びない病気は、主にホルモン分泌の異常、染色体異常、骨代謝の異常のほか、出生時のトラブルが引き金となった病気があります。

先の表で医学的に低身長と判断されたとしても、その理由や原因が様々です。

身長が伸びない理由としてよく挙げられるのが遺伝や体質です。「遺伝的に低身長」といわれると諦めてしまうかもしれませんが、これはあくまで判断基準でしかないため、決して深刻に考える必要はありません。

「乳児期からずっと発達が遅れている」「成長期なのにいきなり背が伸びなくなった」「ほかの身体的な異常が見られる」など、少しでも心配がある場合には、病気でないかをハッキリさせるためにも一度、病院へのご相談をご検討ください。

ここからは子どもの身長が伸びない理由について、ひとつずつ解説していきます。

 身長が伸びない理由➀遺伝や体質

身長は、遺伝による影響を受けることは研究で判明しています。欧米のとある研究では、身長における個人差の8割程度が遺伝によるものだと報告されているほどです。

以下のような「両親の身長から子どもの将来身長を予測する計算式」もあります。

・男子:(母親の身長+父親の身長+13)÷2+2

・女子:(母親の身長+父親の身長-13)÷2+2

とはいえ、こちらはあくまで目安です。ひとつの研究結果でも8割と出ているように、遺伝だけで身長が決まる訳ではありません。栄養状況や生活習慣など、さまざまな外的要因も影響します。

 身長が伸びない理由②生活習慣の乱れ

身長を伸ばすためには、十分な栄養と睡眠、それから適度な運動が必要です。栄養の偏りや睡眠・運動不足が続くと、低身長になり得ます。

とくに睡眠は身長を伸ばすうえで大切だといわれています。成長ホルモンが最も盛んに分泌されるのは、寝ている間であるためです。また、睡眠不足は脳に大きなストレスを与えるため、ストレスによりホルモン分泌が阻害される恐れもあります。

また、最近の小児の低身長に摂食障害(いわゆる拒食症も含む)が問題となっています。保護者が気付いていないケースもあるので、十分に注意及び意識するようにしてください。

 身長が伸びない理由③ストレスなど精神的なもの

身長の伸びには、成長ホルモンの分泌が大きく関わります。そのため、ストレスによりホルモン分泌が阻害されれば、低身長になる恐れがあるでしょう。

子どもにかかる大きなストレスといえば、虐待やいじめを想像する方が多いかもしれません。

しかし、中には「子ども自身も楽しんで通っていると思っていた習いごとだったが、実は大きなプレッシャーを感じており、低身長に影響していた」というケースもあります。

 身長が伸びない理由④ 病気

身長が伸びない病気は、主にホルモン分泌の異常、染色体異常、骨代謝の異常のほか、出生時のトラブルが引き金となった病気があります。

・ホルモン分泌の異常による病気:クレチン症、後天性甲状腺機能低下症、思春期早発症など

・染色体異常による病気:ターナー症候群など

・骨や軟骨の異常による病気:軟骨無形成症、軟骨低形成症など

・子宮内での発育不全による病気:SGA性低身長

どの病気も低身長以外の症状も見られることがほとんどです。不安があれば病院にかかりましょう。

治療法は病気によって異なりますが、どの病気においても早期発見・早期治療が推奨されます。初診は小児科が一般的ですが、低身長以外の症状に合わせた病院や、かかりつけの病院などにかかるのもおすすめです。

 身長を伸ばすために必要な基礎知識

 

まず、年代に関係なく、身長を伸ばすために必要な基礎知識を押さえていきましょう。子どもの身長が伸びないとお悩みの方は、現在のお子さまの生活習慣と照らし合わせながら、ご確認ください。

 牛乳以外の栄養もしっかり摂る

「身長を伸ばすための栄養といえば、カルシウム。カルシウムといえば、牛乳」という考えをお持ちではありませんか。確かに身長を伸ばすうえでカルシウムは欠かせませんが、だからといって牛乳を摂っておけばOKという訳ではありません。

基本となるのは、栄養バランスの整った食事です。

栄養素はほかの栄養素の力を借りることで、より効果が増すことをご存じでしょうか。

カルシウムであれば、ビタミンDと一緒に摂取することで吸収力を高めてくれます。

このほかにも身長を伸ばすためには、骨の材料になるたんぱく質、コラーゲンの合成をサポートするビタミンCなどが必要です。

以上のことから、身長を伸ばすためにも健康のためにも、ひとつの食べ物ばかりを摂取することは避けましょう。

なお、食べ物でいえば、スナック菓子をはじめとした「リン酸塩」を多く含むお菓子にも注意が必要です。リン酸塩はカルシウムの排出を促進するはたらきを持ちます。

子どもにたまに食べさせる分であれば大きな影響は出にくいでしょうが、ひんぱんに食べさせるのは避けたほうがよいかもしれません。

身長を伸ばす食べ物については「身長を伸ばす食べ物って本当にあるの? 注意すべきは食べ方だった?」で詳しく解説しています。

 糖分過多なジュースやお菓子を摂り過ぎない

ジュース、お菓子に限ったことではありませんが、糖分の過剰摂取は栄養バランスを乱します。場合によってはカルシウム不足を引き起こしかねません。間食が多くなり、本来の食事を十分に摂れないことも考えられます。

また、カフェインが含まれるジュースにも注意が必要です。睡眠の質が落ち、成長ホルモンの分泌が阻害される恐れがあります。

これらのジュースは、おやつ同様にひんぱんに与えるのは避けるのが無難でしょう。

 夜更かしは厳禁!休みの日も早寝早起きを

成長ホルモンの分泌を促すため、遅くても22時には布団に入り、23時までには寝付けるような生活習慣がおすすめです。

トータルの睡眠時間に関しては、幼児は11~12時間、小学生は10時間、中・高校生は8~10時間が目安です。

また、体内リズムの乱れも成長ホルモンの分泌阻害につながります。休みの日であっても平日と変わらない就寝時間と起床時間を目指しましょう。

 適度な運動&日を浴びる

適度な運動により刺激を与えることで、骨は伸びやすくなります。特に成長のピークを迎える前である小学校の中~高学年の時期は、意識して運動をさせておきたいところです。

ただし、無理な運動により、体や心に負担をかけては逆効果になりかねません。お子さまが楽しくやれることを優先しましょう。それこそ外で元気に遊ぶといった程度の運動でも十分です。

 子どもの身長を伸ばすためにできること【年齢・世代別】

つづいて、子どもの身長を伸ばすためにご家庭でできることを年齢や世代別に確認していきましょう。お子さまが該当する世代をチェックしてみてください。

 乳児~幼児のお子さま向け対策

0歳から4歳未満の乳幼児の場合、特に栄養が身長の伸びに大きな影響を与えるといわれています。低身長が気になる場合には、栄養に不足がないかを思い返してみましょう。

ただし、乳・幼児期の成長はとくに個人差が大きいといわれています。周りと比べて成長が遅いからといって、深刻になりすぎないようにしましょう。どうしても不安という場合には、病院や保健センターのほか、地域子育て支援センターなど外部にご相談ください。

 小学生のお子さま向け対策

4歳から小学校低学年までは、特に成長ホルモンが身長の伸びに大きな影響を与えるといわれています。一方、小学校中学年~高学年といった思春期以降は、成長ホルモンのほか性ホルモンの影響も大きくなります。

以上のことから、4歳から小学校低学年までは、成長ホルモンが分泌されやすい生活習慣には目を配りましょう。成長ホルモンの材料になるアミノ酸を意識した食事や、適度な運動、そして十分な睡眠が大切です。

また、思春期に入ると性ホルモンの影響も大きくなりますが、基本となるのは変わらない生活習慣です。規則正しく、ストレスの少ない環境を整えましょう。

 中学生のお子さま向け対策

中学生の時期もまた、成長ホルモンのほか性ホルモンが身長の伸びに大きく影響するといわれています。各ホルモンがスムーズに分泌されるよう、バランスのよい食事、適度な運動、十分な睡眠を心掛けましょう。

ただし、成長のピークは男子で13歳、女子で11歳が一般的です。多くの場合はこのぐらいの時期を境に、身長の伸びが減っていくでしょう。

 高校生のお子さま向け対策

身長の伸びがほぼ止まるのは、男子で17歳、女子で15歳が一般的です。(女子の場合は、生理のはじまりが身長ストップのサインといわれることも)そのため、高校生の時点で身長がほぼ伸びなくなるお子さまも少なくないでしょう。

しかし、それ以後もまったく伸びないということではありません。そもそも身長の伸びは、骨の両端にある軟骨「骨端線(こったんせん)」が成長することで起こるものであり、骨端線が閉じたときに身長の伸びも止まります。

骨端線はある日いきなりぴったり閉じて硬くなるものではないため、18歳以後でも身長が伸びるケースは少なくありません。あなたの周りにも大人になってから身長が伸びたという方はいるのではないでしょうか。

そのため、たとえピークを過ぎたとしても、先にご紹介した身長を伸ばすための基礎知識を心掛けていれば、身長を伸ばせる可能性はあります。

 身長の伸び悩みに関するQ&A

 

ここまででは解説しきれなかった「身長の伸び悩みについてよく聞かれる質問」をQ&A形式で分かりやすくまとめました。

「運動をしすぎると身長が伸びないって本当?」「正座習慣は低身長になりやすい?」など、身長にまつわるよく聞くウワサの真偽まで、ぜひご参考ください。

Q. 猫背や反り腰だと身長は伸びない?

A. 身長の伸びそのものには関係ないといわれています。

ただし、「姿勢が悪いまま身長が伸びると、姿勢をさらに悪化させる」可能性があることには注意が必要です。

姿勢が悪いと歪みの影響でケガをしやすくなる、呼吸がしづらくなる、呼吸減少にともなって精神的に不安定になるなど、さまざまな問題の引き金になります。

お子さまの姿勢を改善するためには、ただ注意をするだけでなく、座る環境を整えることもお試しください。正しい姿勢を保つことがそもそも困難である環境でないかをまずはチェックしましょう。

Q. O脚だと身長は伸びない?

A. O脚をはじめ、脚の左右差や骨盤のずれについても、身長の伸び自体にはあまり関係ないといわれています。

矯正することで物理的に身長が伸びるケースは大人でもあるため、「O脚だと身長が伸びないのでは」という杞憂が生まれたのでしょう。

Q. 成長期に筋肉をつけすぎると身長は伸びない?

A. 専門家でも意見が分かれていて、伸びないという医学的根拠はありません。

これについては筋肉のつけすぎよりも、身長の伸びに関係する骨端線(こったんせん)が、トレーニングにより損傷を受ける恐れを指摘する声が近年では散見されます。

筋トレを一切してはいけない訳ではありませんが、あまりに高負荷の筋トレは避けたほうがよいかもしれません。

特に成長のピークを迎える中学生の間までは、ダンベルやマシンなどの器具を使った筋トレは避けるのが無難です。スクワットやプランクなど、自重トレーニングをおすすめします。

Q. 身長が伸びなくなるスポーツはある?

A. どのスポーツに関しても、身長が伸びなくなるという根拠は出ていません。

身長が伸びなくなるスポーツについて調べてみると、新体操やバレエ、サッカー、陸上、剣道、柔道、空手、卓球、水泳、ダンス、ボクシング、スケート、バスケ、ラグビー、レスリング……というように数多くのスポーツがヒットします。

しかし、身長が伸びなくなるという医学的根拠のあるスポーツはこれらを含め、一切存在しません。

なお、スポーツのトッププロになると明らかに低身長な選手が多く見えるものもありますが、それはあくまで「低身長であるほうが有利な競技であるため」でしょう。

ただし、成長期の過度な筋トレによって、骨端線(こったんせん)に大きな負荷がかかったと考えられるスポーツもなくはありません。

Q. プロテインで身長が伸びなくなるって本当?

A. あくまでウワサであり、医学的根拠はありません。

おそらくは筋トレをしていると身長が伸びなくなるというウワサから、さらに発展したものと考えられます。

むしろプロテインには、身長を伸ばすために必要なアミノ酸をはじめとした多くの成分が含まれます。

Q. 薬の服用が低身長を招くことはある?

A. 薬が原因の低身長はあります。

たとえば有名なところでは、「ステロイド」には成長障害の副作用があることで知られています。

ステロイドによって体内のグルココルチコイドと呼ばれるホルモンが分泌されることで、成長ホルモンの分泌が妨げられるためです。

Q. 正座は足を短くするって本当?

A. 医学的根拠はありません。

欧米に比べ、日本人の足が短いことについて、正座習慣が理由として挙げられることがあります。

しかし、昔に比べて日本人の足が長くなったのは、正座習慣がなくなったからではありません。食生活の変化により身長が伸びたことに伴うものです。

Q. ランドセルが身長に影響を与えるって本当?

A. 医学的根拠はありません。

近年になって大きく取り沙汰されるようになった問題であるため、重たいランドセルが身長に与える影響については、根拠が出ていません。

しかし、腰痛を訴えるなど、体に負担を受けている子どもは増えているようです。

特にランドセルのように上から下にかかる負荷は、骨端線(こったんせん)に影響を与える恐れがゼロではありません。体にあったものを使うのがベターでしょう。

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誰であってもバランスの取れた食事は大切ですが、成長期のお子さまであれば、なおのこと。栄養が不足していては、身長の伸びにも影響します。

しかし、食事のたびに栄養バランスを考えるとなると、その負担は大。「子どもにしっかりと食べさせてあげたいのはやまやまだけど、ほかにもやらなくちゃいけないことはたくさんあるし、もういっぱいいっぱい……」。

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