【医師監修】カルシウムの吸収率を上げる&阻害する食べ物を一挙紹介

成長コラム

身長を伸ばすために必要な栄養素のなかでも、代表ともいえるのが「カルシウム」です。

 

しかし、カルシウムは体に吸収されにくいという特性があります。カルシウムを効率的に摂取するためには、その吸収をサポートしてくれる食べ物も同時に摂ることが大事です。

 

今回は、カルシウムの吸収率を上げてくれる食べ物(栄養素)からおすすめのレシピまで紹介します。

この記事の監修者

 

杉山 伸子

由良産婦人科・小児科医院 産婦人科医

京都大学医学部卒業。卒後20年間、産婦人科医として臨床経験を積む。2017年、女性の健康リテラシー向上を目指す団体「Mimosa」を立ち上げる。講演やコラム執筆実績多数。YouTubeでリプロダクティブ・ヘルスに関する情報提供動画を配信中

カルシウムは吸収されにくい栄養素

カルシウムは炭水化物やタンパク質に比べて、消化吸収率が低い栄養素として知られています。また、体内で作り出すこともできないため、食事によって効率的に摂取する必要があります。

 

しかし、その吸収率は食品によってもバラつきがあります。

カルシウムの吸収率が高い食品

※参考:上西一弘・江澤郁子ほか「日本栄養・食糧学会誌」1998年51巻5号

 

カルシウム=牛乳というイメージを持っている方も多いですが、実際に牛乳をはじめ、乳製品はカルシウムの吸収率が高く、おおよそ40%といわれています。ついで、小魚が約33%、野菜は約19%と続きます。

 

牛乳の吸収率が高いのは、牛乳に含まれるカルシウムとリンのバランスが1:1と吸収に理想的な比率であること、牛乳のたんぱく質を消化する過程で生成される物質「カゼインホスホペプチド(CPP)」の作用によってカルシウムの吸収が促進されることが挙げられます。

 

しかし牛乳はカルシウム吸収率が高いですが、苦手なお子様は少なくありません。その場合は、牛乳以外の乳製品や小魚などを意識的に摂るようにしましょう。

カルシウムの推奨摂取量は成長期が最も多い

カルシウムの1日当たりの推奨量(㎎)は、次のようになっています。

男性 女性
1~2歳 450 400
3~5歳 600 550
6~7歳 600 550
8~9歳 650 750
10~11歳 700 750
12~14歳 1000 800
15~17歳 800 650
17~29歳 800 650

※参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)

 

男女ともに12歳~14歳のいわゆる「成長期」が最も多くなっており、とくに男性は約1000mgのカルシウム摂取が推奨されています。これは骨形成が最も盛んに起こる時期であるからです。

 

しかし、平均は639㎎(7歳~14歳)※と、不足しているのが実情です。

※参考:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告

カルシウムの吸収率は年齢とともに下がる

なお、カルシウムの吸収率は年齢によっても変わってきます。10代は35%~45%と高く、20歳以降は徐々に下降していき、30代以降になるとおおよそ25%程度にまで下がります。

 

成長期は一生のうちで最もカルシウム吸収率が高い時期であるだけでなく、この時期に摂取したカルシウム量は将来の「骨量」にも影響します。

カルシウムの吸収率を上げる食べ物

カルシウムを効率よく摂るためには、カルシウムが豊富な食品を食べるのはもちろん、吸収率を上げてくれる食べ物を同時に食べることが大事です。

 

カルシウムの吸収を促進する栄養素として知られているのが次の3つです。

・ビタミンC

・ビタミンD

・マグネシウム

なかでも、ビタミンDはカルシウムの吸収率を上げてくれる代表的な存在として知られています。カルシウムを腸から血管、そして骨へと運ぶのをサポートする働きがあります。

 

また、マグネシウムは質の良い骨を形成するために必要な栄養素であり、骨中のカルシウム量を調整する役割も担います。

では、それぞれが豊富に含まれる食べ物を紹介します。

ビタミンCが豊富な食べ物

ビタミンCは緑黄色野菜、フルーツ、海藻などに多く含まれます。

100gあたりのビタミンCの量
アセロラ(酸味種) 1700mg
焼きのり(あまのり) 210mg
赤ピーマン(生) 180mg
黄ピーマン(生) 170mg
ゆず(生・果皮) 160mg
ブロッコリー(生) 140mg
キウイフルーツ(生・黄肉種) 140mg
レモン(生・全果) 100mg

参考:文部科学省「食品成分データベース

 

ビタミンCの1日の推奨量は男女ともに10歳~11歳で85mg、12歳~17歳で100mgです。※参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」

 

ビタミンC量が最も多いのはアセロラですが、日常的に食べる機会は少ないでしょう。焼きのり100gというのも食事で摂るのは現実的ではありません。

 

日常的な料理で使うのであれば、赤ピーマン、ブロッコリーなど緑黄色野菜が最適です。しかし、緑黄色野菜は苦手なお子さまは多いです。味付けを工夫して少しでも沢山食べてもらえるようにしましょう。

 

ビタミンCが多い食品については「ビタミンCが多い食べ物・飲み物ランキング20選~効率的な取り方~」でより詳しく解説しています。

ビタミンDが豊富な食べ物

ビタミンDは魚類、きのこ類に多く含まれています。

100gあたりのビタミンDの量
あん肝(生) 110μg
しらす干し 61μg
べにざけ(生) 33μg
まいわし(生) 32μg
乾燥まいたけ 20μg
うなぎ(蒲焼き) 19μg
乾燥しいたけ 17μg
さんま(生・皮つき) 16μg
しらす(生) 6.7μg

参考:文部科学省「食品成分データベース

 

ビタミンDの1日の摂取目安量は10歳~11歳で男性6.5㎍、女性8.0㎍、12歳~14歳で男性8.0㎍、女性9.5㎍、15歳~17歳で男性9.0㎍、女性8.5㎍です。

※参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)

 

決して高くない数字と思われますが、男女ともに不足傾向にあります。その要因のひとつに、魚よりも肉を好む子供が多いことが挙げられます。ビタミンDが豊富なのは魚です。

 

また、魚は肉に比べて調理に手間がかかりがちなので、敬遠している親御さんも少なくありません。調理が面倒な方は、しらすや鮭フレークなどのそのまま食べられる食品から取り入れてみましょう。

 

また、ビタミンDは日光に当たると皮膚で生成されます。

マグネシウムが豊富な食べ物

マグネシウムは海藻や大豆類に多く含まれています。

100gあたりのビタミンDの量
あおさ(素干し) 3200mg
あおのり(素干し) 1400mg
てんぐさ(素干し) 1100mg
乾燥わかめ(素干し) 1100mg
刻み昆布 720mg
ほしひじき(乾) 640mg
アーモンド(乾) 290mg
きな粉(全粒大豆・黄大豆) 260mg
切干しだいこん(乾) 160mg

参考:文部科学省「食品成分データベース

 

マグネシウムの1日の推奨摂取量は10歳~11歳で男性210mg、女性220mg、12歳~14歳で男女ともに290㎎、15歳~17歳で男性360mg、女性310mgです。

 

100gあたりのマグネシウム量は海藻類の方が多いものの、実際に食べる量は5gにも満たないので、食べる量を考えると大豆類の方が効率的に摂取できるでしょう。

 

アーモンドなどのナッツ類はコンビニでも購入できて、おやつとしても手軽に食べられます。マグネシウムも意識しないと不足がちになる栄養素なので、間食などで上手に調整しましょう。

カルシウムの吸収を阻害する食べ物&栄養

続いては、カルシウムの吸収を阻害してしまう食べ物を紹介します。

栄養素としては次のようなものです。

・リン

・カフェイン

・シュウ酸

・フィチン酸

上記の栄養素は摂り過ぎると、カルシウムの吸収を阻害します。

リンが豊富な食べ物

・インスタント食品

・ハム、ソーセージなどの加工肉

・スナック菓子

リンは骨の正常な発達に不可欠な成分にもなる栄養素です。先述したように、カルシウムとリンの摂取比率は1:1が理想とされています。

 

しかし、過剰に摂取するとカルシウムの吸収を阻害します。上記に挙げたような加工食品に多く含まれているので、食べ過ぎには注意しましょう。

カフェインが豊富な飲み物

・コーヒー

・紅茶

・エナジードリンク

・コーラ

カフェインも適量であれば、リラックス効果や集中力を向上させる効果があるものの、摂り過ぎはよくありません。利尿作用もあり、カルシウムの排泄を促進させるとも言われています。

シュウ酸が豊富な食べ物

・ほうれん草

・キャベツ

・サツマイモ

シュウ酸はカルシウムと結合するという特徴があります。尿道や腎臓、膀胱の中でシュウ酸がカルシウムと結びついて石のように固くなると、「尿管結石」となり、突然生じる激しい痛みや血尿を起こします。

 

シュウ酸自体は体に必要な栄養素ではありませんが、シュウ酸が含まれる食材にはビタミンや食物繊維など健康的な栄養素が豊富に含まれています。

 

葉菜類はゆでてから食べることでシュウ酸の摂取量を減らすことができます。また、カルシウムをしっかりと摂ることでシュウ酸は体外に排出されるので、シュウ酸を多く含む食品を摂るときは意識してカルシウムをたくさん摂るなど、上手に摂るようにしましょう。

フィチン酸が豊富に含まれる食べ物

・米ぬか

・小麦

・インゲン豆

・トウモロコシ

フィチン酸は、体の有害物質を排出する働きがある反面、カルシウムなどミネラルの吸収を阻害、排出する働きも併せもっています。

 

バランスのよい食事を摂っていれば、フィチン酸を多く含む食品を摂取していてもカルシウム不足に陥ることはありませんが、過剰摂取には注意しましょう。

カルシウムの吸収率を高めるレシピ

サーモンシチュー

 

材料(2人分)

・塩鮭・・・2切れ

・鶏むね肉・・・100g

・ブロッコリー・・・1/2個

・ニンジン・・・1/2個

・たまねぎ・・・1/2個

・まいたけ・・・1パック(100g)

・サラダ油・・・適量

・水・・・200ml

・固形シチュールー・・・20g

・牛乳・・・100ml ※シチュールーの商品による

・塩・・・適量

・コショウ・・・適量

 

作り方

➀ 塩鮭、鶏むね肉、ニンジン、まいたけを一口大、玉ねぎは薄切りにカット

➁ ブロッコリーは塩ゆでにした後、食べやすい大きさにカット

➂ 鍋にサラダ油を入れ、にんじん、たまねぎ、まいたけを中火で炒め、水を加える

④ フライパンにバターを熱し、鮭、鶏むね肉を炒める

⑤ 鍋のアクを取りながら、ニンジンがやわらかくなったタイミングで鮭、鶏むね肉を加え、固形シチュールーを少しずつ溶かしながら入れて、とろみがつくまで煮込む

⑥ ブロッコリー、牛乳を加え、ひと煮立ちさせる。

⑦ お好みでコショウを少々かけて完成

カルシウムが豊富な乳製品を使った料理のなかでも、シチューは沢山の具材を使うことができるのでおすすめです。

 

ビタミンDが豊富な鮭、まいたけ、ビタミンC豊富な緑黄色野菜がカルシウムの吸収をサポートしてくれます。鶏むね肉を加えることで、ボリュームアップとともにタンパク質をしっかりと摂ることができます。

豚肉のチーズソテー

 

 

材料(2人分)

・豚ロース肉・・・2枚

・スライスチーズ・・・2枚

・赤ピーマン・・・1/2個

・レタス・・・2枚

・しょうゆ・・・小さじ2杯

・みりん・・・大さじ1杯

・酒・・・大さじ1杯

・サラダ油・・・少量

・塩・・・適量

・コショウ・・・適量

 

作り方

➀ 豚ロース肉の脂身部分に2~3cmの切り込みを入れ、軽く叩き、塩コショウで下味をつける

➁ しょうゆ、みりん、酒を混ぜ合わせる

➂ 赤ピーマンを薄切りにカット

④ サラダ油を引いたフライパンに豚ロース肉を入れて中火で熱する

⑤ 焼き色がついたら、裏返して同様の焼き色がつくまで焼く

⑥ ➁の調味料を入れる

⑦ スライスチーズをのせて、蒸し焼きにする(1分~2分)

⑧ ⑦と付け合わせの赤ピーマン、レタスを乗せて完成

乳製品を使った料理といえば、シチューやグラタンなど手の込んだものが多いですが、チーズはいつもの料理にチョイ足しするような使い方ができるのでおすすめです。

きな粉の牛乳プリン

 

材料(2人分)

・牛乳・・・250ml

・砂糖・・・大さじ1杯

・きな粉・・・大さじ3杯

・粉ゼラチン・・・5g

・水・・・100ml

 

作り方

➀ 鍋に水、きな粉、砂糖を入れて火をかける

➁ ➀が煮立ったら、牛乳を入れてかき混ぜる

➂ 粉ゼラチンを入れて、溶かしながらよくかき混ぜ、粗熱をとる

④ 器に流し入れて、冷蔵庫で冷やし固める(2時間程度)

カルシウムはデザートでも摂取できます。牛乳プリン単体でも十分ですが、マグネシウムが豊富なきな粉を加えることで、カルシウムの吸収をサポートしてくれます。

 

調理が面倒という方は、牛乳にきな粉を入れたドリンクでもいいでしょう。

カルシウムの吸収率に関するQ&A

カルシウムの吸収を阻害するコーヒーは飲まない方がいいの?

 

 

A. 適量であれば問題ありません。

先述したように、カフェインの過剰摂取はカルシウムの吸収を妨げます。

 

日本においてはカフェインの摂取目安量は定められていませんが、海外(カナダ)では体重によって決められており、7歳~9歳の子供は最大62.5mg/日(コーヒー100ml相当)、10歳~12歳の子供は最大85mg/日(コーヒー140ml相当)、13歳以上は1㎏あたり2.5㎎が最大摂取量となっています。

※参考:厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A ~カフェインの過剰摂取に注意しましょう~

 

つまり、コーヒー1杯が約200mlなので、12歳以下の子どもは1杯でも多いといえます。

適量であったとしても、就寝前など睡眠の妨げになるタイミングでは飲まないようにしましょう。

ウエハースのカルシウムの吸収率は高い??

A. お菓子のなかではおすすめですが、食べ過ぎには注意

 

カルシウムが摂取できるお菓子として代表的な存在でもあるウエハースは、カルシウムの吸収をサポートするビタミンDが配合されているものもあります。

 

もちろん、お菓子のなかではおすすめですが、一日の目安量は必ず守りましょう。脂質や糖分も多いので、食べ過ぎると逆効果になります。