成長期の栄養、不足してるかも?!~親が心配になったときに考えたいこと~

成長コラム

成長期の子どもに欠かすことのできない栄養について詳しく解説しています。

栄養不足が身長に与える影響から成長期に上手に栄養を摂るための食習慣まで紹介しています。成長期のお子さまをお持ちの方はぜひ参考にしてください。

成長期の子どもの身長が思うように伸びていないと、その原因が普段の食事にあるのではないかと考えることがあるでしょう。

実際に普段の食事で摂る栄養は子どもの身長に影響を与えます。

とはいえ、家庭によって食事内容がそう大きく変わることはありません。似たような食事であるにもかかわらず、身長が伸びる子ども、伸び悩む子どもがいるのです。

今回は、成長期に摂るべき栄養にフォーカスし、食事の内容だけでなく、意識すべきことについて解説します。

身長が伸び悩んでいるお子さまをお持ちのお母さん、お父さんはぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

 

杉山 伸子

由良産婦人科・小児科医

京都大学医学部卒業。卒後20年間、産婦人科医として臨床経験を積む。2017年、女性の健康リテラシー向上を目指す団体「Mimosa」を立ち上げる。講演やコラム執筆実績多数。YouTubeでリプロダクティブ・ヘルスに関する情報提供動画を配信中

成長期の子どもの身長が伸びないのは栄養不足が原因??

普段の食事から摂る栄養が子どもの身長の伸びに影響を与えるのは事実ですが、それは原因のひとつに過ぎません。ここでは、まず成長期とはどのようなものなのかを簡単に解説します。

そもそも成長期とは?

成長期とは著しく身長が伸びる時期のことであり、人生のなかで2回あります。1回目は赤ちゃんの時期で「第一次成長期」と呼ばれ、

そして、2回目は思春期です。一般的に成長期というと、この「第二次成長期」を指して使われることが多く、「成長スパート」とも呼ばれます。個人差はありますが、男の子は13歳ごろ~、女の子は11歳ごろ~に迎えます。

成長期に伸びる身長の目安

第一次成長期において、生まれたばかりの赤ちゃんは約50cmですが、1年後には約75cmになります。つまり、1年間で25cmも身長が伸びます。

参考:厚生労働省『乳幼児身体発育調査

小児期(~4歳)以降は毎年約6cm伸び、第二次成長期に入ると、おおよそ8~9cm程度伸びます。なかには10cm以上伸びるケースもあります。

成長期でも身長が伸びない原因

成長期における身長の伸び方は説明した通りですが、思うように身長が伸びないこともあります。考えられる原因としては、主に3つあります。

不規則な生活習慣

睡眠・運動・食事など生活習慣は子どもの成長に大きく関わってきます。

食事についてはこの記事でより詳しく後ほど解説しますが、睡眠も食事と同じくらい大切です。

というのも、身長は成長ホルモンの働きによって伸び、その成長ホルモンは睡眠中に最も多く分泌されるからです。「寝る子は育つ」というわけです。

しかし、沢山寝れば寝るほどいいものでもありません。もちろん、睡眠不足は最も避けるべきですが、寝れば寝るほど成長ホルモンが多く分泌されるわけではないのです。7時間でも寝れば、十分といえます。

まだ成長期がきていない

成長期(第二次成長期)の時期は人によってバラつきがあります。先述したように、男の子なら13歳頃、女の子は11歳頃にピークを迎えるのが一般的ですが、高校性になってから著しく身長が伸びることもあります。

成長期を迎えているはずなのに、一向に身長が伸びないとお悩みの方はまだ成長期がきていないことも十分に考えられます。

十分に栄養がとれていない

成長期に身長が伸びない原因の3つ目は、今回のテーマでもある「栄養不足」です。人の身体は食べ物によって作られるため、栄養が身長に大きく関わることは言うまでもありません。

成長期にとくに必要とされる栄養素

身長を伸ばす上で、とくに必要とされる栄養素は次の4つです。

・タンパク質(肉、魚など)・・・骨や筋肉など身体の構成成分

・カルシウム(牛乳など)・・・骨の発育に不可欠

・ビタミンD(きのこなど)・・・カルシウムの吸収を助ける

・亜鉛(魚介類など)・・・ホルモンの合成、分泌に必要

成長期における各栄養素の1日の推奨量

タンパク質 カルシウム ビタミンD※1 亜鉛
男性(10~11歳) 40g 700mg 6.5μg 7㎎
男性(12~14歳) 60g 1,000mg 8.0μg 10mg
男性(15~17歳) 65g 800mg 9.0μg 12mg
女性(10~11歳) 50g 750mg 8.0μg 6mg
女性(12~14歳) 55g 800mg 9.5μg 8mg
女性(15~17歳) 55g 650mg 8.5μg 8mg

参照:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020 年版)』

※1ビタミンDは推奨量ではなく目安量

推奨量はあるものの、毎日きっちり守ろうとするのは大変なので、あくまで目安と考えておくのが賢明でしょう。

これらの栄養素を重視した食事メニューについては「身長を伸ばす食べ物って本当にあるの? 注意すべきは食べ方だった?」で詳しく解説しています。

成長期の子どもに「完璧な栄養」を与えるのは難しい

たんぱく質、カルシウム・・・、成長期にとくに必要となる栄養素はあります。しかし、いつも完璧な食事を作るのは難しいです。

栄養素よりも食事量に意識を向けよう

普段の食事において、含まれる栄養素などの“内容”は大事ですが、最も避けるべきは「栄養の総量不足」です。栄養不足に陥ると、身体が十分に成長しないだけでなく、精神的にも悪影響を及ぼします。

まずは、食事量をしっかりと満たすことが何より大事です。成長期においては必要のない栄養素は基本的に存在しません。成人を越えた大人であれば、脂質や糖質を控えることもときには大事かもしれません。しかし、運動量の多い思春期においてはそれらの栄養素も十分に摂る必要があります。

とくに部活動をしている場合は、男の子で約3,000kcal、女の子で約2,700kcalは必要と考えていいでしょう。

おやつも「捕食」としての役割を果たす

「おやつはよくない」というイメージがありますが、これは偏った見方といえます。なぜなら、一度の食事で十分な量を食べられない場合は、おやつが「捕食」の役割を果たすからです。

菓子パンやスナック菓子など糖質、脂質が多い食べ物は注意が必要ですが、タンパク質やカルシウムが含まれるおやつであれば問題はありません。ただし、3食の食事量に影響がない程度にしましょう。

成長期に上手に栄養を摂るための食習慣

ここでは、成長期において上手に栄養を摂るコツを紹介します。

食事回数は多くても良い

食事は3食が基本と言われますが、お子さまが少食であるならば、食事の回数を増やす工夫をしてあげましょう。

また、運動不足や睡眠不足が少食の原因となっている可能性もあります。食事に関わる様々な要因に注意を払うことも大事です。

朝・昼・晩ご飯の「意味付け」をしよう

面倒くさいという理由で、朝ごはんを食べない子どもは結構多いです。しかし、朝ごはんを抜くことは栄養摂取の観点では非常にもったいないことです。朝ごはんは午前中の活動エネルギーを得るために欠かせないものであり、食べないと栄養不足になり、集中力の低下を招きます。

このように、それぞれ何のために食べているのかを説明してあげることで子どもの「栄養意識」は高くなります。

朝ごはん・・・朝は午前中の活動エネルギーを得るため

昼ごはん・・・午後の活動エネルギーを得るため

晩ごはん・・・その日に不足している栄養を補うため

上で紹介しているのはあくまでも一例ですが、それぞれの食事にはそれぞれに意味があることをお子さまには教えてあげましょう。

よく噛んで食べる

近年は柔らかい食事が増えて、あまり噛まずに食べる子どもが増えています。しかし、咀嚼は消化吸収を助ける働きがあります。

あまり噛まずに早食いの癖がついている場合、よく噛んで食べることは意識するだけではなかなか改善できません。定期的によく噛まないと食べられない食べ物を出すなど工夫しましょう。