成長期の食事メニューの考え方&一日の献立例【医師監修】

成長コラム

一般的に成長期といえば、小学校の高学年から高校入学くらいまでですが、お子さんがそのくらいの年齢になる頃には、日頃の食事メニューもマンネリになっているご家庭は少なくないでしょう。

とはいえ、成長期こそ“食育”が最も大事な時期。毎日の食事が今後の成長に大きく関わります。

今回は、成長期の食事を考える上で押さえておくべきポイントや実践したい食事メニュー例をご紹介します。

この記事の監修者

佐藤 留美

藤崎メディカルクリニック 副院長

2002年久留米大学医学部卒業後、久留米大学病院で研修医として勤務。

現在は同大学の関連病院で呼吸器科・感染症科・アレルギー科として勤務する傍ら、2023年10月より藤崎メディカルクリニック 副院長に就任。
医学博士、日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本感染症学会感染症専門医・指導医、日本化学療法学会化学療法認定医・指導医、日本結核病学会抗酸菌症認定医・指導医、日本アレルギー学会アレルギー専門医等を取得。

本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。

成長期の食事メニューは「栄養バランス」を軸に考える

食事において「栄養バランス」が大事であることは周知の事実ですが、なぜ大事なのかをきちんと理解している方は多くはありません。

栄養バランスが大事な理由

まず大前提として、子どもの成長・発育のためにはあらゆる栄養素をまんべんなく摂る必要があります

【成長・発育に欠かせない栄養素(代表例)】

・タンパク質

・脂質

・炭水化物

・ビタミン

・ミネラル

・鉄

・カルシウム

栄養バランスを整えることで、上記の栄養素を過不足なく摂れるというのもメリットのひとつですが、それだけではありません。それぞれの栄養素を効率よく摂取できるのです

例えば、骨の成長に欠かせないカルシウムはビタミンC、ビタミンDと一緒に摂ることで効率よく吸収されます。

カルシウムの吸収を助ける栄養素について詳しくは「【医師監修】カルシウムの吸収率を上げる&阻害する食べ物を一挙紹介」で解説しています。

栄養バランスの良い食事は、沢山の栄養素を摂れるだけでなく、吸収を良くするというメリットもあるのです。

「食事バランスガイド」を使ってメニューを組み立てよう

食事の栄養バランスを考える上で参考にしたいのが「食事ガイドバランス」です。

※農林水産省『「食事バランスガイド」について』より

食事ガイドバランスは、健康で豊かな食生活を実現するために、2005年に厚生労働省および農林水産省によって策定・発表されました。1日に「何を」「どれだけ」食べたらいいのかを、イラストで示したものであり、5つのグループごとに「つ(SV)」という独自の単位で表現しています。

「つ(SV)」の量は年齢、性別によって変わってきます。成長期における男女では、次のようになります。

成長期の男の子の場合

一般的に、男の子の成長期は10歳~17歳であり、この時期の摂取すべきエネルギーは1日2,000~2,400kcal。これを食事ガイドバランスに当てはめると、以下のようになります。

食事グループ つ(SV)
主食 5~6
副菜 5~6
主菜 3~6
乳製品 2~3
果物 2

主食グループ5~6つ(SV)は、ご飯だと中盛りで4杯に相当します。食べ盛りの男の子にしては少ない印象を持つ方もいるかもしれませんが、多少はオーバーしても問題ありません。※詳しくは後述

成長期の男の子で部活をしている場合

学校の部活動や地域のスポーツクラブに所属しているお子さんの場合、当然活動量は多くなるので、摂取すべきエネルギーも多くなり、目安は1日2,400~3,000kcal。これを食事ガイドバランスに当てはめると、以下のようになります。

食事グループ つ(SV)
主食 7~8
副菜 6~7
主菜 5~7
乳製品 2~3
果物 2

先ほど紹介したケースよりも乳製品、果物以外の食事グループで1~2つ(SV)増えます。中盛りのご飯だと+1杯、主食のメニューも+1品程度の計算になります。部活動でも種目やチーム状況によって活動量は変わるため、概ねの目安として考えましょう

成長期の女の子の場合

一般的に、女の子の成長期は8歳~14歳であり、この時期の摂取すべきエネルギーは1日1,700~2,200kcal。これを食事ガイドバランスに当てはめると、以下のようになります。

食事グループ つ(SV)
主食 4~5
副菜 5~6
主菜 3~4
乳製品 2~3
果物 2

主食グループ5~6つ(SV)は、ご飯だと中盛りで3杯に相当します。思春期になると、自主的に食事を制限してしまうお子さんもいますが、上記の量を目安にしっかり食べましょう。

成長期の女の子で部活をしている場合

男の子同様に、部活動をしている女の子は、摂取すべきエネルギーも多くなります。目安は1日2,000~2,500kcal。これを食事ガイドバランスに当てはめると、以下のようになります。

食事グループ つ(SV)
主食 5~6
副菜 5~6
主菜 3~6
乳製品 2~3
果物 2

とくに、水泳や長距離走など消費エネルギーが多いスポーツをしている場合、きちんと食べないと栄養不足になります。1食で沢山食べるのが苦手な場合は、運動前に間食をするなど工夫しましょう。

成長期に摂りたい栄養素

成長期、とくに身長を伸ばす上で不可欠な栄養素は以下の4つです。

・タンパク質(肉、魚など)・・・骨や筋肉など身体の構成成分

・カルシウム(牛乳など)・・・骨の主要成分であり、細胞の分裂・分化にも寄与する

・ビタミンD(きのこなど)・・・カルシウムの吸収を助ける

・亜鉛(魚介類など)・・・ホルモンの合成、分泌を助ける

成長期(10歳~17歳)における、それぞれの1日の推奨量は以下の通りです。

タンパク質 カルシウム ビタミンD※ 亜鉛
男の子(10歳~11歳) 40g 700mg 6.5μg 7mg
男の子(12歳~14歳) 60g 1,000mg 8.0μg 10mg
男の子(15歳~17歳) 65g 800mg 9.0μg 12mg
女の子(10歳~11歳) 50g 750mg 8.0μg 6mg
女の子(12歳~14歳) 55g 800mg 9.5μg 8mg
女の子(15歳~17歳) 55g 650mg 8.5μg 8mg

参照:厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020 年版)

※ビタミンDは目安量

例えば12~14歳の男の子の場合、3食に分けるとして、1食当たりはタンパク質20g、カルシウム333㎎、ビタミンD2.2μg、亜鉛2.3mgになります。この量を食材に置き換えると、以下のようになります。

・タンパク質20g・・・納豆3パック、卵3個、サラダチキン100g

・カルシウム333㎎・・・牛乳コップ1.5杯(300g)、ヨーグルト2.5パック(250g)

・ビタミンD2.2μg・・・うずら卵1個、まいたけ半パック

・亜鉛2.3mg・・・牛もも肉50g、枝豆150g、切り干し大根100g

上記は一例であり、目安ですが、どの食材にどれくらいの栄養素が含まれているのかはある程度把握しておくようにしましょう。

成長期の栄養に関して詳しくは「成長期の栄養、不足してるかも?!~親が心配になったときに考えたいこと~」で解説しています。

成長期の食事メニュー例【朝・昼・夕】

成長期に限らないですが、食事の基本は3食きちんと食べること。栄養バランスを整えるために、計画的にメニューを考えましょう。

【朝食】目玉焼きトースト&ヨーグルト

材料

・食パン・・・1枚(4枚切りor5枚切り)

・卵・・・1個

・ケチャップ、マヨネーズ、塩コショウ・・・適量 ※お好みで

・牛乳・・・コップ1杯(200㎎)

・プレーンヨーグルト・・・100g

・砂糖orハチミツ・・・適量

栄養バランスは意識したいものの、忙しい朝は調理にあまり時間をかけたくないもの。手軽に食べられる食パンは朝食にはうってつけですが、ジャムやバターではなく、「完全栄養食品」である卵をお供にするのがポイントです

成長期に欠かせないカルシウムはヨーグルト、もしくは牛乳で補いましょう。甘味料が含まれないプレーンヨーグルトの場合、砂糖よりもハチミツがおすすめ。ヨーグルトに含まれる善玉菌を増やす役割を果たしてくれます。

【昼食】野菜たっぷりチキン南蛮弁当&チーズ

材料

・ご飯・・・150g

・梅干し

【チキン南蛮】

・鶏むね肉・・・1枚(100g)

・卵・・・1個

・小麦粉・・・適量

〇南蛮酢

・しょうゆ・・・大さじ1杯

・砂糖・・・大さじ1.5杯

・酢・・・大さじ1杯

〇タルタルソース

・ゆで卵・・・1個

・玉ねぎ・・・8分の1個

・マヨネーズ・・・適量

・ケチャップ・・・少々

・塩コショウ・・・少々

【付け合わせの野菜】

・リーフレタス・・・1枚

・ブロッコリー・・・2房

【玉子焼き】

・卵1個

・塩・・・適量

【+α】

・チーズ・・・1ピース

コンビニで昼食を買う中高生もいますが、栄養バランスを考えると弁当がベストです。おかず:ご飯の割合は1:1を基本として、主食、主菜、副菜を組み合わせましょう。

思春期なのでガッツリした揚げ物を弁当の主役にするのはいいですが、同時に野菜も摂れるように工夫しましょう。また、弁当にプラスして、カルシウムを補えるチーズを別に入れてもいいでしょう

【夕食】豚の生姜焼き&冷奴

 

材料

・ご飯・・・150g

【豚の生姜焼き】

・豚ロース・・・150g

・薄力粉・・・適量

〇たれ

・すりおろし生姜・・・大さじ1杯

・しょうゆ・・・大さじ1杯

・砂糖・・・小さじ1杯

・料理酒・・・小さじ1杯

〇付け合わせ

・キャベツ・・・適量

・ミニトマト・・・2個

【冷奴】

・絹ごし豆腐・・・100g

・ねぎ・・・適量

・すりおろし生姜・・・少々

【味噌汁】

・味噌・・・大さじ1杯

・水・・・200ml

・乾燥ワカメ・・・適量

夕食はその日の食事で不足している栄養をカバーする役割もあるため、朝、昼に何を食べるかどうかを考慮しましょう。

成長期はタンパク質を十分に摂ることが大事ですが、中でもおすすめは豚肉。 豚肉はタンパク質のほか、ビタミンも豊富に含んだ栄養満点の食材です

また、タンパク質は肉や魚などの動物性タンパク質が多くなりがちですが、植物性タンパク質である豆腐も積極的に活用しましょう。副菜や味噌汁の具としても活躍してくれる便利な食材です。

成長期の食事における考え方

ここでは、成長期の食事メニューを考える上で押さえておきたいポイントについて解説します。

成長スパート期はカロリーオーバーしてもいい

成長期の中でも、著しく身長が伸びる時期を「成長スパート」といいます。男の子だと13歳、女の子だと11歳頃に迎えることが多いです。

成長期スパートについて詳しくは「【医師監修】身長が伸びる時期=成長スパートとは?親が子どものためにできること」で解説しています。

成長スパート期は男女ともに思春期の時期でもあるため、とくに女の子は「ダイエット」を意識して、食事を制限してしまうこともあります。

しかし、成長期に栄養不足は禁物。この時期に十分な栄養を摂らないと成長を妨げてしまいます。たとえ、平均よりも体重が多かったとしても「カロリー」を気にせず、しっかり食べることを心掛けましょう。

規則正しい時間に食べる

生活リズムは発育に大きく関係しますが、3食決まった時間に食べることで生活リズムは整います。とくに、身長を伸ばす上で最も重要な睡眠をしっかりとるためにも食事は睡眠の3時間前には済ましておくことが大事

中高生になると塾で帰りが遅くなることもありますが、できる限り19時までには夕食を取るようにしましょう。

間食を上手く活用する

チョコレートやポテトチップスといった高脂質なお菓子はおすすめできませんが、栄養を補う意味で間食は有効です。とくに、以下のようなカルシウムやビタミンを補ってくれる食べ物がおすすめです。

・ヨーグルト

・果物(ドライフルーツ)

・チーズ

・ナッツ

間食も食べ過ぎは禁物です。3食きちんと食べられる範囲で取るようにしましょう。

成長期のおやつに関して詳しくは「【管理栄養士監修】成長期に必要なのは「おやつ」だった!」で解説しています。

普段の食事が「学力」に影響する可能性がある

「朝食を食べない子どもに比べて、朝食を食べた子どもの方がテストの点数が高かった」という文部科学省の調査結果があります。

つまり、食事は体の成長だけでなく、学力にも影響する可能性があるのです。とくに朝食は午前中の活動エネルギー、頭を働かせるエネルギーになるので、必ず食べるようにしましょう。

食事が悪い=身長が伸びないわけではない

子どもの身長が伸びない原因を全て食事のせいにしてはいけません。身長は食事だけでなく、睡眠や運動などの生活習慣、また遺伝など様々な要因が考えられます。何より、成長期がまだきていない可能性も十分にあるからです。

成長期のタイミングについて詳しくは「【医師監修】成長期は遅いほうがいいって本当?晩熟型の特徴とメリット」で解説しています。

子どもの成長のために食事について考えることはもちろん大事ですが、あれこれ考え過ぎると気疲れしてしまうので、ある程度楽観的に考えましょう

成長期は睡眠と運動も大事

最後に、食事以外で子どもの成長のために心掛けたいポイントを解説します。

睡眠は最低でも8時間以上とる

身長を伸ばす上で欠かせない成長ホルモンは、睡眠時に多く分泌されます。睡眠は体の成長だけでなく、学習能力や運動能力にも大きく関わるので、成長期においては非常に大事です。

小学校では「8時間以上は寝るように」と言われることが多いですが、睡眠時間は小学生であれば9~13時間、中学生、高校生でも8時間以上はとるのがベストです

中学生以降になると、部活や塾で帰宅が遅くなることも増えますが、就寝環境を整えるなど睡眠時間を確保するための工夫が必要。最近は夜遅くまでスマートフォンを使用する子どもが増えていますが、睡眠の妨げになるのでやめさせるようにしましょう。

成長期の子どもにおける睡眠効果については「日本の子は世界一「睡眠不足」!子どもを眠りへ導く"入眠ワザ"とは?」で解説しています。

1日1時間以上は運動しよう

運動は体力の向上だけでなく、「成長」という観点においては以下の役割も果たしてくれます。

・運動をすることでお腹が空いて、しっかりと食べられる

・適度な疲れからしっかりと睡眠がとれる

しかし近年は、子どもの運動時間が減少傾向にあると言われています。とくに最近のコロナ渦においてはより深刻な問題になっています。運動系の部活動やスポーツクラブに所属している子どもなら問題ありませんが、そうでない場合は自主的に運動する必要があります。

簡単なストレッチや体操、ウォーキングなど始めやすい運動でもいいので、1日1時間は体を動かすようにしましょう。