カルシウム不足になるとどうなる?症状や食事の改善対策

成長コラム

カルシウムは骨や歯を形成する働きがあるミネラルですので、成長期のお子さまには欠かせない栄養素です。

 

しかし現代の日本人はどの世代もカルシウム不足で、骨が弱くなったり虫歯になりやすくなったりしてしまいます。

カルシウム不足を解消するためには、カルシウムが豊富な食べ物を積極的に取り入れることが大切です。

 

この記事では、カルシウムの基礎からカルシウム不足を解消するポイントまで解説するので、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

 

杉山 伸子

由良産婦人科・小児科医

京都大学医学部卒業。卒後20年間、産婦人科医として臨床経験を積む。2017年、女性の健康リテラシー向上を目指す団体「Mimosa」を立ち上げる。講演やコラム執筆実績多数。YouTubeでリプロダクティブ・ヘルスに関する情報提供動画を配信中

 

本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨している訳ではございません。

カルシウムとは?効果や1日あたりの摂取量

カルシウムとは、人間の体重の12%を占めるミネラルのことで、骨や歯のエナメル質を形成する働きがあります。

 

体内のカルシウムの99%が骨や歯に存在しており、残りの1%は血液や組織液や細胞に存在しています。

 

骨は常に同じ状態を保っているように思われますが、「骨吸収(カルシウムの溶出)」と「骨形成(カルシウムの沈着)」を繰り返しています。

カルシウムは食事によって摂取すると小腸で吸収され、その後血液に取り込まれて、骨形成(カルシウムを沈着)します。

 

一方で、血液中のカルシウム濃度は一定に保たれており、その濃度が低下すると副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、「骨吸収(カルシウムの溶出)」によって元のカルシウム濃度に戻します。

カルシウムの1日あたりの摂取推奨量

厚生労働省によると、カルシウムの1日あたりの推奨量は以下の通りとされています。

  男性

(摂取推奨量)

女性

(摂取推奨量)

1~2歳 450mg 400mg
3~5歳 600mg 550mg
6~7歳 600mg 550mg
89 650mg 750mg
1011 700mg 750mg
1214 1000mg 800mg
1517 800mg 650mg
18~29歳 800mg 650mg

【厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」】

 

817歳の成長期のお子さまは、成人よりも多くのカルシウムを摂取しなくてはなりません。

 

というのも、成長期は骨量が増える時期であり、骨形成(カルシウムの沈着)が骨吸収(カルシウムの溶出)を上回るためです。

 

例えば、12~14歳の男の子がカルシウムの摂取推奨量を摂取するとしたら、1日あたりに牛乳を6杯飲む必要があります(普通牛乳には、コップ1杯150mlにカルシウム165mgが含まれる)。

 

成長期に必要な栄養素について、詳しくは「成長期の栄養、不足してるかも?!~親が心配になったときに考えたいこと~」も併せてご覧ください。

現代の日本人は「カルシウム不足」である

以下は、カルシウムの1日あたりの摂取推奨量と、実際の1日あたりの摂取量平均をまとめたイメージです。

【厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を参考に作成】

成長期のお子さまの場合、男の子は最大31%、女の子は最大33%もカルシウムが不足しているのが現状です。

 

先述したとおり、成長期は骨を形成するために、成人よりも多くのカルシウムを摂取するが必要があります。

 

しかし平均値で考えた場合でも、成長期の男の子も女の子も、1日あたりおおよそ牛乳2杯分のカルシウムが不足していることになります。

日本人がカルシウム不足になる原因

カルシウム不足の原因として考えられるのは「現代の献立の影響」で、以下の2つの要因が考えられます。

カルシウム不足になる要因

①カルシウムが豊富な食材を利用したメニューが少ない

②食の欧米化による現代の日本人の魚離れ

例えば、牛乳・ヨーグルト・バター・チーズ・小魚などはカルシウムが豊富な食材ですが、これらを使用したメニューを毎日食べる…というご家庭は少ないのではないでしょうか。

 

実際に厚生労働省「国民健康・栄養調査」を総合的に見たところ、2005年あたりから魚と肉の摂取量が逆転して小魚などを食べる機会が減っていることや、乳製品の摂取量が少ないことが分かります。

 

つまり、現代の日本人の食卓においては、「カルシウムが豊富な食材を食べる機会が少ない=カルシウムが不足しやい」ということです。

通常の食事の範囲で過剰摂取を心配する必要はない

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、カルシウムの耐容上限量は1日あたり2,500mgとされています。

 

カルシウムを過剰摂取した場合の障害として、便秘、軟組織の石灰化、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、鉄や亜鉛の吸収障害などが挙げられます。

 

ただし、通常の食事からカルシウムを摂取する場合、過剰摂取を心配する必要はありません。

カルシウム不足になるとどうなる?症状は?

カルシウム不足になると、私たちの健康にはどのような影響があるのでしょうか?

骨が弱くなる

カルシウム不足になると、骨が弱くなってしまいます。血液内のカルシウム量を保つために「骨吸収(カルシウムの溶出)」が進み、骨量が減少したり骨密度が低下したりしてしまうからです。

 

また骨密度(骨の強度)は20代でピークとなり、それ以降は増やすことは難しいとされています。

「くる病」という病気のリスクが高くなる

現代はカルシウムやビタミンDなどが不足することにより、骨形成が不十分となる「くる病」を発症する子供も増えています。

 

くる病とは、子供の頃にカルシウム等が十分に骨に沈着せず、骨塩(骨のセメント部分)が不十分な弱い骨ができてしまう病気のことです。骨が柔らかくなったり曲がりやすくなることで、O脚やX脚、身長が伸びない、乳歯が生えるのが遅くなるといった症状がみられます。

虫歯になりやすくなる

カルシウム不足になると、虫歯になりやすくなります。

 

しかし「カルシウム不足=歯がもろくなる」というのは間違いです。

 

正しくは、カルシウム不足となることで唾液が十分に分泌されなくなり、歯の再石灰化が十分に行われず、その結果初期虫歯が進行しやすくなったり、口内環境が悪化して虫歯になりやすくなったりしてしまうのです。

【コラム】カルシウム不足イライラは俗説

カルシウム不足だからといって、イライラの原因に直結する訳ではありません。

 

血液中に存在するカルシウムは、脳神経細胞の興奮を抑制したり心拍数を一定に保ったりする働きがあるため、「カルシウム不足=脳神経が興奮=イライラ」と考えられたのだと想定されます。

 

しかし実際には、イライラの原因は複雑なものであり、カルシウム不足が直接的な原因であるとは栄養学的には考えにくいです。

カルシウムが豊富な食材や食べ物

 

カルシウム不足を解消するためには、カルシウムが豊富な食べ物や食材を毎日の食事に取り入れることが大切です。

 

では、具体的にどのような食材や食べ物に、どの程度のカルシウムが含まれているのでしょうか?

乳製品

食品 目安量 カルシウム量
普通牛乳 コップ1杯(150ml) 165mg
チェダーチーズ スライス1枚(20g) 148mg
プロセスチーズ スライス1枚(20g) 126mg
カマンベールチーズ 1切れ(20g) 92mg
クリームチーズ 1切れ(18g) 12.6mg
ヨーグルト 1カップ(75g) 90mg
ソフトクリーム 1人分90g 117mg

【引用:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」】

 

大豆製品

食品 目安量 カルシウム量
木綿豆腐 1丁(300g) 279mg
絹ごし豆腐 1丁(300g) 225mg
がんもどき 大1つ(100g) 270mg
油揚げ生 1枚(20g) 62mg
糸引き納豆 四角パック1つ(50g) 45mg

【引用:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」】

 

魚介類・海藻類

食品 目安量 カルシウム量
生干しししゃも 5尾(100g) 330mg
かたくちいわし煮干し 10g 220mg
しらす干し 100g 210mg
まいわし丸干し 100g 440mg
天然焼きあゆ 100g 80mg
焼あじ 1尾(68g) 480mg
乾ひじき 10g 100mg

【引用:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」】

 

野菜類

食品 目安量 カルシウム量
ケールの葉 生100g 220mg
水菜 生100g 210mg
小松菜 生100g 170mg
チンゲン菜 生100g 100mg
ほうれんそう 生100g 49mg
乾切干大根 15g(乾燥状態) 75mg

【引用:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」】

 

カルシウムを効率的に摂取する3つのポイント

 

カルシウム不足を解消するためには、カルシウムを豊富に含む食材を積極的に摂取するだけでなく、効率よくカルシウムを摂取する必要があります。

 

この章では、カルシウムを効率的に摂取するための、3つのポイントをご紹介します。

ポイント①こまめにカルシウムを摂取する

まずは、こまめにカルシウムを摂取するよう意識しましょう。1日3食バランスよくカルシウムが豊富な食材を取り入れるだけではなく、おやつにヨーグルトやチーズなどの乳製品や、小魚を取り入れられると良いでしょう。

ポイント②カルシウムとビタミンDを同時に摂取する

カルシウムを効率的に摂取するためにも、カルシムとビタミンDを同時に摂取されることをおすすめします。ビタミンDには、小腸でのカルシウムの吸収をサポートする働きがあるからです。

 

ビタミンDは魚(イワシ・サンマ・サケ)や、キノコ類(しいたけやキクラゲ)に豊富に含まれています。

メニュー例:

・サーモンのきのこクリームソース

・ツナと小松菜のバターソテー

・ししゃも焼きとヒジキの煮物

また、ビタミンDは紫外線を浴びると体内で生成されるので、子供を外で遊ばせることも大切です。

ポイント③スナック菓子などに含まれるリン酸に注意

カルシウムを効率的に摂取するためにも、スナック菓子などに含まれるリン酸の摂りすぎに注意をしましょう。

 

この理由は、リン酸はカルシウムと結びついて、体外に排出させる働きがあるからです。

 

リン酸が多く含まれる食べ物は、スナック菓子・加工食品・インスタント食品などです。カルシウムを積極的に摂取するだけではなく、リン酸の摂取を減らすことで摂取したカルシウムを効率よく吸収できます。

 

カルシウムの吸収率を上げるor妨げる食べ物、栄養素については「【医師監修】カルシウムの吸収率を上げる&阻害する食べ物を一挙紹介」でより詳しく解説しています。