中性脂肪・血中脂質を改善するための食事メニュー〜DHA・EPAを効率的に摂取しよう〜

中高年になると、健康診断で中性脂肪やコレステロールの数値が高くなり、医師から改善するように指摘される方が増えてきます。中性脂肪とコレステロールを混同する方がいますが、どちらも「血中脂質」の一種であり、血中脂質を改善するためには、普段の食事を見直す必要があります。

しかし、血中脂質を改善するために、どういった食事をすればよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。漠然と、「油物を控えよう」「野菜をたくさん食べよう」と考える方も多いですが、それだけでは効率的に改善することはできません。

今回は中性脂肪および血中脂質を改善するための食事および栄養素について詳しく解説します。

この記事の監修者

中島 由美
Crystal 医科歯科 Clinic International 内科院長

 

経歴
  • 金沢医科大学医学部卒。金沢医科大学病院にて小児科・内科専攻。日本各地の病院で内科、皮膚科を担当。美容クリニック院長を経て、2018年8月にCrystal 医科歯科 Clinic International 内に内科、美容皮膚科、アレルギー科を開設。 
  • 現在内科院長として、テレビやラジオ出演、Webメディアの記事編集を行っている。

本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨しているわけではございません。

中性脂肪とは血液中に存在する脂肪のひとつ

冒頭でも書いたように、中性脂肪は「血中脂質」の一種。血中脂質とは、血液中に存在する脂肪のことであり、中性脂肪のほかにも、コレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸などがあります。

中性脂肪は人間のエネルギー源となるが、余った分は脂肪になる

「中性脂肪を減らす」「中性脂肪を燃焼する」などを謳った健康商品が多いため、中性脂肪=悪というイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、中性脂肪は体内で重要な役割を果してくれます。

人間は脳や体を動かすエネルギーとしてブドウ糖を使いますが、ブドウ糖が不足した場合に、中性脂肪はそれを補うエネルギー源として働きます。また、中性脂肪は保温や外部からの衝撃を緩和するなどといった役割も果します。

しかし、エネルギーとして使われなかった中性脂肪は皮下脂肪や内臓脂肪になります。

皮下脂肪と内臓脂肪について詳しくは「【医師監修】皮下脂肪・内臓脂肪とは?中性脂肪が原因⁉効果的な減らし方とは? 」で解説しています。

中性脂肪が増える原因は、糖質と脂質の摂り過ぎです。脂肪=脂質のイメージが強いかもしれませんが、中性脂肪はブドウ糖が不足した際にエネルギーとして使われるため、ブドウ糖=糖質を摂取し過ぎることの影響は大きいといえます。

中性脂肪の基準値

中性脂肪の基準値は30〜149mg/dlが正常とされています。中性脂肪が少なすぎるのも健康上よくありませんが、現代人の多くは中性脂肪が多すぎることが問題となっています。

また、中性脂肪は過剰に増えても自覚症状を感じないので、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

血中脂質は中性脂肪のほかに、コレステロール・リン脂質・遊離脂肪酸がある

前述したように、血中脂質には中性脂肪にもさまざまな種類があります。代表的なものがコレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸です。

コレステロール

コレステロールとは、細胞膜や身体の働きを微調整するホルモン、脂質の消化・吸収を助ける胆汁酸などの材料となる物質です。

コレステロールには、「悪玉(LDL)コレステロール」と「善玉(HDL)コレステロール」があります。悪玉コレステロールが余剰になると血液中を循環したままになり、血管の壁に層をつくって動脈硬化の原因になります。一方、善玉コレステロールは、過剰なコレステロールを血管から回収する役割を果します。

つまり、悪玉コレステロールが多い状態(善玉コレステロールが少ない状態)は動脈硬化の危険信号であり、LDLコレステロールを増やし過ぎないことが重要となります。

リン脂質

リン脂質は細胞膜を作るための材料になるだけでなく、脂肪をエネルギーに変える働きもあります。

中性脂肪やコレステロールに比べると知名度が低いリン脂質ですが、不足すると中性脂肪や悪玉コレステロールが増加するため、欠かすことのできない成分です。

遊離脂肪酸

遊離脂肪酸とは、脂肪の分解によって生じる脂肪酸です。脂肪酸とは脂質を構成要素であり、中性脂肪、コレステロール、リン脂質の構成要素でもあります。

遊離脂肪酸には肝臓や筋肉でのインスリン作用を阻害する働きがあるため、血液中の遊離脂肪酸が多くなると、高脂質症や糖尿病を発症しやすくなります。

中性脂肪および悪玉コレステロールを減らすためには運動も大事

血中脂質において健康診断で問題視されるのが中性脂肪と悪玉コレステロールの数値。これらを改善するためには食事を見直すだけでなく、運動習慣をつくることが大事です。

運動によって中性脂肪が減少すること、善玉コレステロールを増加させることはさまざまな研究によって証明されています。

運動は、有酸素運動と筋トレを組み合わせて行うのが理想です。筋トレは脂肪を分解する成長ホルモンの分泌を促してくれるだけでなく、基礎代謝を高めてくれるので有酸素運動時のエネルギー消費を高めてくれます。

中性脂肪を減らす運動について詳しくは「中性脂肪を減らす方法は「運動」が効果的~中性脂肪対策vol.1~ 」で解説しています。

中性脂肪を減らす効果が期待できるDHA・EPA

中性脂肪を減らすために効果的なのは、糖質および脂質を減らすことです。

糖質制限ダイエットおよび脂質制限ダイエットについては「【医師監修】糖質制限と脂質制限はどちらが効果的?両方同時でもいい? 」で詳しく解説しています。血中脂質を減らすためには糖質制限や脂質制限のように、特定の栄養素を制限することは有効ですが、逆に積極的に摂取すべき栄養素もあります。それが青魚の脂に多く含まれるDHAとEPAです。

DHAとは

DHAとは「ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic Acid)」の略称であり、不飽和脂肪酸のひとつ。不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられますが、DHAは多価不飽和脂肪酸のn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)に属します。

多価不飽和脂肪酸は体内では生成できない「必須脂肪酸」であるため、食事で摂取する必要があります。DHAは魚の中でもマグロ、サンマ、サバに多く含まれます。

EPAとは

EPAとは「エイコサペンタエン酸(Eicosapentaenoic Acid)」の略称であり、DHAと同様に多価不飽和脂肪酸のn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)に属します。EPAも必須脂肪酸なので食事から摂取する必要があり、サバ、サンマ、マグロ、イワシに多く含まれます。

DHAおよびEPAは中性脂肪を減らすだけでなく、善玉(HDL)コレステロールを増やして、悪玉(LDL)コレステロールを減らす働きがあるため、血栓の生成を抑える役割も果します。

なお、DHAとEPAは血中脂質を改善する以外にもさまざまな働きがあります。主な働きは以下の通りです。

DHA・EPAが中性脂肪を減らす仕組み

DHA・EPAが中性脂肪を減らす仕組みは、以下の3つの働きによるものです。

① 脂質の脂肪生成を抑制する
② 脂肪酸を分解する
③ 血中の中性脂肪を分解する

また、DHA・EPAを摂取することで脂肪燃焼作用のある「ベージュ脂肪細胞」を増加させて、エネルギー消費を促進されるとの研究報告もあります。もともと人間の体には脂肪を貯める「白色脂肪細胞」と脂肪を分解する「褐色脂肪細胞」があり、最近の研究で後者の褐色脂肪細胞の多くがベージュ脂肪細胞であるとわかっています。

つまり、DHA・EPAは中性脂肪の生成を抑制し、分解するだけでなく、エネルギー消費を促す作用があるのです。

DHA・EPAは摂取が難しい

DHAとEPAは中性脂肪(および血中脂質)を改善するためには欠かせませんが、十分な量を摂取するのが難しいという側面があります。

DHA・EPAの摂取基準

厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準(2020年版) 」によると、DHAおよびEPAを含むn-3系脂肪酸全体の1日の摂取目安量は男性2g、女性1.6g(※50~64歳の場合は男性2.2g、女性1.9g)と定められています。DHA・EPAに限定すると、1日1,000~1,500mgの摂取することが望ましいとされている。

しかし、アジ一匹(150g)に含まれるDHAは505mg、EPAは275mg、いわし1匹(100g)に含まれるDHAは568mg、EPAは690㎎。このことからわかるように、DHA・EPAを毎日1,000~1,500mg摂取するのは非常に難しく、ほとんどの国民は推奨量を大きく下回っています。

DHA・EPAは調理方法によって減少してしまう

また、DHA・EPAは脂なので、調理することによって含有量が減少してしまいます。焼く、煮るだと約-20%、揚げると約-50%も減少します。

DHA・EPAの含有量を維持するためには生で食べるのがベストですが、新鮮である必要があり、コストも高くなります。

缶詰を活用しよう

そこでおすすめなのが魚の缶詰です。缶詰は魚のDHA、EPAがあまり失われず残っており、調理する必要もないので、ストック食品としても重宝します。ただ、DHA・EPAは酸化しやすいので、缶詰を開けたらその日のうちに食べきることが大事です。

【中性脂肪を減らした方向け】DHA・EPAを効率的に摂取できる食事メニュー

サバ缶パスタ

材料(1人分)
・サバ缶・・・1缶
・パスタ・・・100g
・塩コショウ・・・適量
・オリーブオイル・・・大さじ1杯

作り方
① お湯を沸騰させた鍋にパスタを入れて茹でる ※茹でる時間はパッケージの表記通り
② 茹で上がったパスタをお皿に盛り付ける
③ サバ缶、塩コショウ、オリーブオイルを入れて混ぜて完成

サバ缶を使った簡単レシピ。サバ缶はイワシ缶やツナ缶よりもDHA・EPAの含有量が多い傾向にあります。魚の缶詰を料理に使う際は、煮汁は捨てないことが大事です。

魚の缶詰はストックしておけば、パスタを茹でるだけで簡単に料理に使えるので大変便利です。夏の暑い時期は冷静パスタにするのもよいでしょう。


※ツナとトマトの冷静パスタ

まぐろとアボカドサラダの亜麻仁油のにんじんドレッシング添え

材料(1人分)
・マグロ・・・50g
・アボカド・・・2分の1個
・トマト・・・2分の1個
・きゅうり・・・1本【ドレッシング】
・にんじん・・・1本
・亜麻仁油 大さじ 3杯
・塩コショウ・・・少々
・お酢・・・大さじ2杯
・蜂蜜・・・大さじ2杯

作り方
① マグロ、アボカド、トマト、きゅうりを一口大にカット
② にんじんをすりつぶす
③ すりつぶしたにんじんに亜麻仁油、塩コショウ、お酢、蜂蜜を混ぜる
④ ①をお皿に盛り付け、③をかけたら完成

ポイントは亜麻仁油のにんじんドレッシングを使うことです。亜麻仁油に多く含まれるa-リノレン酸はDHA・EPAと同様に「n-3系脂肪酸」のひとつ。a-リノレン酸は亜麻仁油のほか、エゴマ油に多く含まれます。魚が苦手な方は、亜麻仁油やエゴマ油を有効活用しましょう。

ノンフライししゃもの南蛮漬け

材料(2人分)
・ししゃも・・・6尾
・玉ねぎ・・・2分の1個
・赤ピーマン・・・1個
・黄ピーマン・・・1個
・にんじん・・・3分の1個
・サラダ油・・・大さじ1杯
・だし汁・・・100cc
・砂糖・・・大さじ2杯
・醬油・・・大さじ2杯
・酢・・・100cc

作り方
➀ 玉ねぎを薄くスライス、赤ピーマン、黄ピーマン、にんじんを千切りにする
➁ だし汁、砂糖、醬油、酢を混ぜ合わせ、そこに➀を漬ける
③ フライパンにサラダ油を敷いて、ししゃもを焼く
④ 焼いたししゃもを➁に入れて、漬ける
⑤ 1時間ほど漬ければ、お皿に盛り付ける

ポイントはししゃもを揚げずに、フライパンで焼き上げること。ししゃものDHA・EPA含有量は焼いてしまっても失われますが、油で揚げるよりは残存率は高くなります。

DHA・EPAを効率的に摂取できるサプリメントも

今回の記事で解説したように、DHA・EPAは日常の食事から十分な量を摂取するのは難しいため、サプリメントで補うのがおすすめです。