メタボリックシンドローム対策に運動は必須~食事だけではダメな理由~
メタボリックシンドロームを解消するためには、食生活とともに、運動習慣を改善することが大切です。しかし、食生活はまだしも、運動習慣の改善は難しいものです。
食事の改善だけでメタボリックシンドロームを改善、予防しようとする方が多いですが、おすすめしません。
今回はメタボリックシンドロームを解消するための運動をテーマに、今まで運動習慣がなかった方でも簡単に始められるメニューを紹介します。
この記事の監修者
Alohaさおり自由が丘クリニック開業医
日本医科大学医学部卒業。日本医科大学武蔵小杉病院で研修後、腎臓内科学教室に入局。その後、善仁会丸子クリニックにて10年院長勤務。現在は、Alohaさおり自由が丘クリニックを開業。内科、皮膚科、美容皮膚科を標榜している
メタボリックシンドローム改善は運動が必須
メタボリックシンドロームを解消するにあたり、食事よりも軽視されてしまいがちな運動ですが、厚生労働省が公表している「メタボリックシンドローム改善のための基本戦略」では、食事(過食)とともに運動不足の解消が重要であることが記載されています。
運動習慣の改善が重要視されているのは、食事だけのメタボ改善には落とし穴があるからです。
食事だけではダメな理由
食事だけでメタボリックシンドロームを解消しようとすると、次のような現象に陥る可能性があります。
・基礎代謝が落ちる
・脂肪をため込みやすくなる
・ストレスがたまりやすくなる
・睡眠の質が落ちる
基礎代謝が落ちると効果は一時的で終わってしまう
メタボリックシンドロームを解消するにあたって、多くの方は減量することになります(後述しますが、必ずしもメタボリックシンドロームの解消=減量ではないのでご注意ください)。
単純な減量であれば、食事を制限するだけで十分な効果があります。しかし、運動せずに食事だけで減量すると、脂肪だけでなく、筋肉量も落ちてしまいます。筋肉量が落ちると基礎代謝をはじめ、エネルギー代謝量が減ってしまうので、太りやすい体になります。
筋肉量をできる限り維持させながら、減量するには運動は欠かせないのです。
飢餓状態になると脂肪をため込みやすくなる
食事制限は適度に行うことが大切であり、極端に制限してしまうと体が飢餓状態になります。すると、体は飢餓に備えて脂肪をため込みやすくなります。
食事を適度に制限できれば問題はありませんが、医師の指導もなく、自分自身の判断だけだと、やり過ぎてしまうケースも少なくありません。
運動をしていれば、多少食べ過ぎたとしもその分を消費できるので、過度に「食事を制限しなければいけない」という思い込みはなくなり、上手に食事量を調整しやすくなります。
運動習慣はストレス解消や睡眠の質向上につながる
食事は人生における最大の楽しみともいえるので、その食事を制限することは多少なりともストレスを感じます。ストレスが溜まり過ぎると、過食症や肥満症を引き起こす可能性もあります。女性の場合だと、ホルモンバランスを崩す要因にもなります。
また、空腹状態は交感神経が優位になり、寝付きが悪くなる可能性があります。
これらを解消するのに運動は最適です。体を動かして、適度に汗を流すことはストレスの軽減になり、適度に疲労感を得られるので夜も寝付きやすくなります。
ただし、睡眠直前の運動は睡眠の妨げになるので注意しましょう。
メタボリックシンドロームの定義からも分かる運動の重要性
ご存知の方も多いかもしれませんが、ここで改めてメタボリックシンドロームの定義についておさらいしておきましょう。
メタボリックシンドロームと診断される基準は次の通りです。
※参照:厚生労働省「メタボリックシンドロームの定義と診断基準」
上記の通り、メタボリックシンドロームの定義には体重(BMI)の基準は定められておらず、あくまでもウエストの周囲(体型)で診断しています。言い換えると、体重を落とすだけでなく、体を引き締めることが重要なのです。そのためには食生活の改善もさることながら、運動は欠かせないことを意味します。
メタボリックシンドローム対策の運動でカギとなる「強度」とは?
ここまで運動の重要性について解説してきましたが、具体的にどのくらい運動をすればいいのでしょうか。
その指標として、「運動強度」が参考になります。
運動時の負荷を数値化した「メッツ(METs)」
運動強度を表す代表的な単位として「メッツ(METs)」があります。
※運動強度を表す単位として、心拍数を指標にすることもあります
安静に座っている状態を1メッツとして、その活動が何倍のエネルギーを消費するかを示し、普通歩行は3メッツに相当します。このメッツ(METs)が高いほど、運動時間当たりのエネルギー消費量は多くなります。
強度(メッツ)別運動例
メッツ(METs) |
|
1 |
安静に座っている状態 |
1.5 |
デスクワーク |
2 |
料理、洗濯、ゆっくりした歩行 |
2.5 |
ヨガ、ストレッチ |
3 |
普通歩行(67m/分)、ボウリング |
3.5 |
ウォーキング(75~85m/分)、軽い荷物運び |
4 |
自転車、通勤、卓球 |
4.5 |
水中ウォーキング、ゴルフ(クラブを担いでラウンド)、テニス |
5 |
速めのウォーキング(107m/分) |
5.5 |
バドミントン |
6 |
バスケットボール |
6.5 |
山登り |
7 |
ジョギング、サッカー |
8 |
サイクリング、水泳(クロール) |
9 |
ランニング(139m/分) |
10 |
ランニング(161m/分) |
11 |
ランニング(188m/分) |
12 |
縄跳び |
参考:健康長寿ネット「運動強度とエネルギー消費量」、スポーツ庁「「運動強度(METs)」で見る、効果的な身体活動は?」
高強度の運動ほど効果が高いわけではない
当然ですが、エネルギー消費は運動量が多いほど高くなります。
その運動量を表す単位として「エクササイズ(Ex)」があります。
1エクササイズ=メッツ×時間 |
メッツが高い(=強度が高い)運動ほど短時間でも運動量は多くなるわけですが、だからといって高強度の運動ばかりすればいいというわけではありません。なぜなら、高強度の運動はそれだけ体に負荷がかかっているわけですから、長時間続けることは難しいからです。
低強度の運動を長時間する方が、結果として運動量が多くなることも少なくありません。
メタボリックシンドロームは「内臓脂肪症候群」とも呼ばれています。そして、内臓脂肪を燃焼させるためには高強度よりも低強度を長時間行った方が脂肪燃焼効果は高いとも言われています。
1週間の目標運動量の目安
メタボリックシンドロームを解消するための運動量として、1週間あたり10エクササイズ以上を目標にしましょう。
厚生労働省では、生活習慣病予防のために1週間あたり23エクササイズ以上を目標に設定していますが、この「エクササイズ」は日常生活における活動も含まれているので、意図した運動では10エクササイズがちょうどいいでしょう。
1エクササイズの運動例は次の通りです。
ゴルフ・・・15分 ランニング、水泳(クロール)・・・7~8分 歩行、洗車、屋内の掃除など・・・20分 |
例えば、10メッツに相当するランニング(161m/分)を1時間やれば、1週間分の目標エクササイズ量の10エクササイズに達するわけですが、運動をしない日が長く続くことになります。運動習慣を作るという意味でも、10エクササイズに相当する運動を週に2~3回に分けて行うのが理想です。
【タイプ別】メタボ解消おすすめ運動メニュー
それでは、メタボリックシンドロームを解消するための運動メニューを「忙しい方」「運動が好きな方」「趣味を活かしたい方」のタイプ別にそれぞれ紹介します。
忙しい方向けの運動メニュー
普段お仕事や子育てなどで忙しい方は、運動する時間を作ることも難しいかもしれません。そういった方は自宅でできる運動や通勤時間を活用したメニューを組むのがおすすめです。
ヨガ・ストレッチ・・・20分 階段上り下り・・・10分 通勤の徒歩・・・20分 |
上記のメニューを週3回行えば、1週間10エクササイズに相当します。
マンションやアパートにお住まいで自宅に階段がない方は「踏み台昇降」でも問題ありません。専用の台がない場合は雑誌を重ねたもので代用しましょう。
また、通勤や通学でも意識的に徒歩の時間を多くすることを心掛け、最寄りの一駅前で降りて帰宅する、エレベーターではなく階段を使うなど工夫しましょう。
運動が好きな方向けの運動メニュー
普段から運動をしている、体を動かすのが好きな方であれば、ジムやプールなど専用施設を利用するのもいいでしょう。また、有酸素運動だけでなく無酸素運動(筋トレ)を取り入れるのもおすすめです。
水中ウォーキング・・・20分 サイクリング(エアロバイク)・・・20分 腕立て伏せ・・・10分 |
上記のメニューであれば、週2回で10エクササイズに相当します。
腕立て伏せでなくても、ジムであればベンチプレスなど器具を使った筋トレもいいでしょう。筋トレを行うことで、よりエネルギー代謝をしやすい体を作ることができます。
趣味を生かしたい方向けの運動メニュー
ゴルフやテニスなどのスポーツが趣味の方であれば、その趣味を活かしましょう。
10エクササイズに相当するスポーツとおおよその時間は下記の通りです。
ボウリング・・・3時間 卓球・・・2時間半 ゴルフ・・・2時間 テニス・・・2時間 |
実際にボウリングを3時間もプレーするのはハードですが、毎週1時間プレーして、足りない分はその他の運動で補いましょう。
また、ゴルフのラウンドプレーはカートに乗るのが一般的ですが、できる限り歩くなどして、より運動量を増やす工夫しましょう。
現在スポーツの趣味をお持ちでない方は、これを機に始めてみるのもアリです。学生時代にやっていたスポーツを久しぶりにやってみたり、全く新しいスポーツに挑戦するのもいいでしょう。
スポーツ別METs表
代表的なスポーツのMETsは下記の通りです。
メッツ(METs) |
|
2.5 |
ビリヤード |
3 |
ボウリング、バレーボール |
4 |
卓球 |
4.5 |
ゴルフ、テニス |
5 |
野球、ソフトボール、サーフィン |
5.5 |
バドミントン |
6 |
バスケットボール、水泳 |
7 |
ジョギング、サッカー、スキー、スケート |
8 |
サイクリング |
参考:健康長寿ネット「運動強度とエネルギー消費量」
自分に合った運動メニューを作ろう
今回紹介した運動メニューは一例であり、上手に組み合わせたり、無理がなければ、「10エクササイズ」という数字に囚われることなく、もっと沢山運動をしても全く問題ありません。
自分の好みや得意なメニューを作ることで継続的に運動をすることができます。
運動習慣をつくるためのポイント
運動習慣を長く続けるためには、自分に合ったメニューを作ることはもちろん、ちょっとした工夫が大切です。
ここでは、運動習慣を作るためのポイントを紹介します。
無理のない範囲で行う
まず大前提として、無理のない範囲で運動しましょう。無理な運動は過度な疲労感やケガにつながります。
負荷が大きいメニューは運動効果も高いですが、最初は軽い運動からはじめてみて、徐々に負荷を大きくしましょう。
運動を記録する
日々の運動を記録して、その成果を視覚化することはモチベーション維持につながります。
おすすめはスマートフォンのアプリを活用する方法です。最近では、日々の体重を記録するもの、消費カロリーを計算してくれるものなど、様々なアプリがあります。無料で使えるアプリも充実しているので、自分に合ったものを見つけましょう。
運動仲間を作る
ついついサボってしまう方は、友人や家族、恋人など一緒に運動をする仲間を作りましょう。仲間と約束するとサボり防止になるだけでなく、成果を報告しあうことでモチベーションが高まります。
ジョギングなど一人だと退屈になりがちな運動も仲間と一緒にやれば楽しくなるでしょう。
メタボ解消の基本は「食事療法」であることをお忘れなく
今回は運動をテーマに解説してきましたが、メタボリックシンドロームを解消するための基本は食生活の改善です。
・規則正しく3食食べる
・食物繊維が豊富な食品を食べる
・腹八分を心掛ける
・糖質・脂質が多い食品を食べ過ぎない
普段の食事で意識すべきことは沢山あります。
メタボリックシンドロームを解消するための食事については「メタボリックシンドロームの食事改善ポイント~予防対策と献立のヒント~」で詳しく解説しています。
食べる楽しみはそのままにメタボ対策をサポート
メタボリックシンドロームの代表的な原因のひとつが、糖質と脂質の過剰摂取です。
ですので、メタボリックシンドロームを予防、改善するためには糖質と脂質の摂取を制限する必要があります。しかし、徹底して制限するのは難しいものです。何より食事は人生の楽しみのひとつですから、制限ばかりしているとストレスにもなります。
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