GABA(ギャバ)の効果はストレス緩和だけではない〜高血圧予防や美容にもおすすめ〜

チョコレートやお茶、醬油など、GABA(ギャバ)が含まれた商品は数多く販売されています。

GABAはストレス緩和や睡眠改善など、現代人の悩みを解消してくれる成分として知られています。ただ、一昔前に比べるとGABAの認知が高まっているとはいえ、その効果については懐疑的な方は少ないでしょう。

今回はGABAの効果について解説します。GABAを摂取することで期待できる効果だけでなく、それらの効果を得られることを実証したエビデンスも紹介します。

この記事の監修者

中島 由美
Crystal 医科歯科 Clinic International 内科院長金沢医科大学医学部卒。金沢医科大学病院にて小児科・内科専攻。日本各地の病院で内科、皮膚科を担当。美容クリニック院長を経て、2018年8月にCrystal 医科歯科 Clinic International 内に内科、美容皮膚科、アレルギー科を開設。現在内科院長として、テレビやラジオ出演、Webメディアの記事編集を行っている。

本記事の医師監修に関して、学術部分のみの監修となり、医師が商品を推奨しているわけではございません。

GABAとは何か?

GABAとは、「γ(ガンマ)-アミノ酪酸」(Gamma Amino Butyric Acid)の略称であり、アミノ酸の一種。タンパク質にはならない「非タンパク質性アミノ酸」に分類されます。

GABAは動物から植物まで幅広く自然界に存在し、人間では脳や脊髄などの中枢神経に特に多く存在しています。

近年注目を集めている「GABA効果」

GABAは脳や脊髄で「抑制性の神経伝達物質」として働きます。近年はその効果が広く認知され、現代人のニーズにマッチしていることからGABAが配合された商品は人気を集めています。

現在、GABAは機能性表示食品として最も届出件数が多い成分であり、今後もGABA関連の商品は益々増えることでしょう。

GABAの効果とは

GABAはストレス緩和や睡眠改善に関する効果がフォーカスされがちですが、それだけではありません。GABAはダイエットや美容、学習効率アップなど、幅広い効果をもたらす成分として知られています。

ここでは、GABAを摂取することで期待できる効果を9つ紹介します。

①ストレス緩和

GABAの代表的な効果がストレスの緩和です。

GABAは抑制性の神経伝達物質として、副交感神経を優位にする働きがあります。副交感神経とは、臓器や器官などの働きを抑制させる自律神経であり、副交感神経が優位になることで心身がリラックスした状態になります。

逆に、体内のGABAが不足すると興奮性の神経伝達物質が過剰に分泌されてしまうため、緊張状態が続く、ストレスを抱えやすくなります。

ストレスを溜め込み過ぎないためには、体内に一定のGABAが蓄積された状態が理想といえるでしょう。

 ②睡眠の質向上

副交感神経を優位にすることは、睡眠の質向上にもつながります。

「質のよい睡眠」とは、以下の3つが満たされた睡眠のことをいいます。

① 寝付きの良さ
② 眠りの深さ
③ スッキリとした目覚め

この中でも、寝付きの良さはその他の要素に影響を与えるため最も重要。副交感神経が優位になることで、身体はリラックス状態となり、スムーズな入眠を促します。

睡眠の質については「睡眠の質とは何か? 睡眠チェックシート&改善方法 」で詳しく解説しています。

 ③高血圧の抑制


GABAには、ノルアドレナリンという血管を収縮させる作用がある神経伝達物質の分泌を抑える働きあります。血管の収縮を和らげる=血圧を下げる効果を期待できます。

なお、正常な血圧の方がGABAを摂取しても必要以上に血圧が下がることはありません。

 ④中性脂肪の増加抑制

GABAには脂質代謝を促す成長ホルモンを増やす作用があるため、血液中の脂質(中性脂肪)を減らす効果を期待できます。

また、成長ホルモンは活力とも大いに関係しているため、GABAを摂取することで活力アップも期待できます。

 ⑤肌弾力の維持

GABAは脳や脊髄だけでなく、肌の中(真皮)にも存在しています。真皮に存在するGABAは、真皮の構成成分であり、肌に弾力をもたらすヒアルロン酸やコラーゲン、エラスチンの産生を促進する働きがあります。

また、GABAの摂取による睡眠改善も間接的に肌の弾力に良い影響をもたらすでしょう。

⑥肌のターンオーバー促進

前述のようにGABAは真皮に存在するため、長らく真皮にのみ作用すると考えられていました。しかし、近年は肌の表皮にも作用することが判明。肌のターンオーバーに関与する、インボルクリンの産生を促進する効果が確認されました。

※参考:クラシエ「GABAの表皮への作用を確認

肌のターンオーバーは年齢とともに遅くなり、様々な肌トラブルを招きます。年齢肌に悩む方にとっては嬉しいポイントといえるでしょう。肌のターンオーバーについては「【図解】肌のターンオーバーとは?年齢とともに周期が遅くなる原因&対策 」で詳しく解説しています。

 ⑦食べ過ぎ予防

GABAは満腹感に関わる内臓感覚神経を活性化する作用があるため、食べ過ぎを予防する効果を期待できます。

ダイエットをしている方、ついつい食べ過ぎてしまう方は、日常の食事にGABAが豊富な食べ物を取り入れてみてはいかがでしょうか。
※GABAが豊富な食べ物については後述します

 ⑧肝機能の改善

GABAには腎臓・肝臓機能を改善させる作用があり、アルコール代謝を促進する効果を期待できます。

なお、GABA以外に肝機能を正常化させる働きを持つ栄養素にビタミンB群が挙げられますが、ビタミンB群はGABAの吸収をサポートする働きもあるため、一緒に摂取するのがおすすめです。

 ⑨記憶力の向上

人間は脳内の海馬という部分で学習した情報を整理して、記憶として残しています。その海馬にダメージを与えるのがストレスホルモンであり、ストレスホルモンが多く分泌されると記憶力に悪影響を及ぼします。

GABAの代表的な効果である「ストレス緩和」は、間接的に「記憶力を向上させる」効果も期待できるともいえます。

 GABAは本当に効果があるのか?

GABAにはストレス緩和、睡眠の質改善、ダイエット、美容、学習効率アップなど様々な効果があるわけですが、「本当に効果があるの?」と疑問に思っている方も少なくないでしょう。

ここでは、GABAの効果が本当にあるのかどうかについて解説します。

GABAは経口摂取だと意味がない?

GABAは脳や脊髄に多く存在している成分であるため、経口摂取しても意味がないという説があります。事実、脳内でのGABAの産生を促す仕組みは現時点では解明されていません。

一方で、腸には脳と同様にGABAの受容体があるという説があり、GABAを経口摂取することで自律神経の働きが整うという論文は数多く発表されています。

多くの臨床試験でもGABAを経口摂取した場合の効果は認められているため、GABAの働きに関しては研究段階な部分はありますが、経口摂取であっても効果を期待できると考えてよいでしょう。

 GABAの効果は様々な研究で証明されている

前述したように、GABAの効果は様々な臨床試験や研究で証明されています。ここでは、GABAの効果に関する研究について、いくつか紹介します。

ストレス緩和

GABAのストレス緩和効果を示すエビデンスとして、静岡県立大学と京都女子大学と共同で実施した調査が挙げられます。この調査は、「日本一長く怖い吊り橋」と言われる谷瀬の吊り橋(全長300 m、高さ54 m)を被験者が渡り,被験者にかかるストレスを計測するというもの。

事前にGABAを摂取していた被験者は,吊り橋の中間地点でのストレス指数(IgA)がGABAを摂取しなかった被験者と比べて低値を示し,吊り橋でのストレスをGABAが軽減することを示す結果となりました。

※参考:J-STAGE「GABAの生産技術の確立と高機能食品の市場開発

睡眠の質改善

公益財団法人日本農芸化学会の報告では、GABAの摂取が睡眠の質に関するQOLの向上や頻尿の改善効果が示唆されています。

実験では、介護老人保健施設に入所している高齢者に就寝の30分前に100 mgのGABAを摂取してもらい、小型脳波計によって入眠潜時,ノンレム睡眠時間,起床時の気分などを計測。GABA 100 mgを摂取することで睡眠の質の向上がみられる結果となりました。

※参考:J-STAGE「GABAの生産技術の確立と高機能食品の市場開発

高血圧の抑制

日本食品科学工学会誌では、GABAの摂取によって降圧作用が確認されたことが報告されています。

この調査では、20mg、30mg、40mgのGABAを配合した和風調味料を各10名に摂取してもらい、その後の血圧を測定。すべてのグループにおいて摂取開始後2週間の血圧の平均値が降下し、最も血圧降下作用がみられたのがGABAを30mg摂取したグループという結果となりました。

なお、この調査では各グループに血圧が高めの人を入れて行われましたが、その結果からGABAが血圧高めの人の血圧は低下するものの、正常血圧の人の血圧には影響しないことも判明しました。

※参考:J-STAGE「γ-アミノ酪酸配合和風調味料の軽症高血圧者、正常高血圧者を含む健常者に対する降圧作用

中性脂肪の抑制

株式会社サタケの佐々木泰弘氏と河野元信氏が発表した論文によると、GABAの摂取によって血中中性脂肪値が低下することが示されています。

この実験では、ラットに 1g/kgの GABAを11日間連続投与。その結果、血中中性脂肪濃度に顕著な低下がみられ,その効果は GABA と分岐鎖アミノ酸(BCAA)を組み合わせて並行投与すると,さらに高まることが示されています。

また人の場合についても、血中中性脂肪が多い人に1日100mgのGABAを摂取させることで、中性脂肪の平均値が摂取前 111.1 ㎎/dl であったのが 4 週間後には76.0 ㎎/dl の正常値に回復したことが示されています。

※参考:J-STAGE「ギャバ(GABA)の効能と有効摂取量に関する文献的考察

食べ過ぎ予防

GABAの食べ過ぎを予防する効果は、京都府立大学と株式会社ファーマフーズの共同研究で発見されました。本研究によって、以下の3つの効果が報告されています。

① 経口摂取したGABAは内臓感覚神経(求心性迷走神経)を介しての脳機能(満腹感誘導)に影響を与えること
② 食事は内臓感覚神経を活性化する作用を有し、GABAがこの食後内臓感覚神経活性化作用を増強すること
③ ②の神経経路が満腹感増強という脳機能と連関し、食べ過ぎを予防すること

なお、内臓感覚神経からの脳作用は、GABAの経口摂取では駆動する一方、注射では駆動しないことも示されています。

※参考:京都府立大学「【共同研究成果】GABAの脳作用による満腹感増強についての産学連携研究成果をスイスの学術誌で発表

 GABAの効果を得るために必要な摂取量

ここまで紹介したようにGABAには様々な効果があるわけですが、どれくらいの量を摂取すればその効果を得られるのでしょうか。

確実に効果を期待するならば1日30mg以上

GABAは1日の摂取量の目安になる食事摂取基準のような明確な規定がありません。

ただ、先ほど紹介した論文「ギャバ(GABA)の効能と有効摂取量に関する文献的考察 」(J-STAGE)によると、精神安定作用を期待する場合では1日あたり、26.4~70mg、血圧降下作用を期待する場合は1日あたり10~80mgの摂取量で有用性が認められると記載されています。

GABAの効果を確実に得るためには、1日あたり30mg以上は摂取した方がよいといえるでしょう。

GABAは副作用がない

摂取量の話題になると、過剰摂取による副作用が心配ですが、GABAの摂取による副作用は今のところ報告されていません。

とはいえ、無限に摂ってよいというものではないので、1日当たり100㎎程度を一つの基準とするとよいでしょう。

GABAが豊富な食べ物

GABAは野菜や果物、漬け物に豊富に含まれています。

【GABAが豊富な食品ランキング】

 

食品

GABA含有量 mg/100g

1

トマト缶詰(ホール)

95

2

メロン

63.0~96.3

3

たくあん

39~95

4

奈良漬

58

5

キムチ

38~84

6

トマト(桃太郎)

57

7

西洋かぼちゃ(えびす)

56

7

野菜ジュース

56

9

じゃがいも

43

10

大豆もやし

40

※参考資料:
・農研機構「機能性成分含有量データ(抜粋)
・美味技術研究会誌「ギャバ(GABA)の効能と有効摂取量に関する文献的考察
・愛媛県県工業系研究報告「野菜によるγ-アミノ酪酸の蓄積

また、醬油や米酢といった調味料や、微量ではあるものの、ワインやビールといったアルコール飲料にもGABAは含まれています。

GABAが豊富な食べ物については「GABA(ギャバ)が豊富な食品&一緒に摂りたい食品〜おすすめレシピ3選〜 」で詳しく解説しています。