【医師監修】血糖値スパイクの症状は眠気?自己診断、原因、血糖値を抑える飲み物・食事・運動とは
健康診断で異常なしと言われてもみつからない「血糖値スパイク」の仕組み、症状、セルフチェック、対策を紹介します。血糖値スパイクとは、糖尿病ではなく普段の血糖値は正常であるにもかかわらず、食後の血糖値が急激に上昇する現象です。健康診断で異常なしと言われても安心できないのが「血糖値スパイク」です。
この記事の監修者
藤堂 紗織
Alohaさおり自由が丘クリニック開業医
日本医科大学医学部卒業。
日本医科大学武蔵小杉病院で研修後、腎臓内科学教室に入局。
その後、善仁会丸子クリニックにて10年院長勤務。現在は、Alohaさおり自由が丘クリニックを開業。内科、皮膚科、美容皮膚科を標榜している
血糖値(食後過血糖)スパイクとは?~仕組みと症状について~
はじめに、血糖値スパイクの仕組み、症状について説明します。
血糖値スパイクの概要
「血糖値スパイク」の状態になるひとは、空腹時の血糖値は正常なので「隠れ糖尿病」ともいわれています。食後は誰でも血糖値が高くなるものですが、その上がり方、下がり方が急激なことを血糖値スパイクと言います。「スパイク」という表現は、血糖値のグラフで突然高くなり突然下がる「棘=スパイク」のような線がえがかれることに由来しています。
血糖値スパイクの仕組み
いつ計測しても血糖値が高い糖尿病とは違い、血糖値スパイクは食後1-2時間の急激な高血糖が特徴です。インスリンの分泌が少なかったり働きが不十分で、通常は食後約2時間後には正常値に下がる血糖値が下がらない(140mg/dl以上)ことが原因です。食後2時間たった時点で計る血糖値が140mg/dlを超えると血糖値スパイク(食後高血糖)と判断されると言われています。
“引用” “食後高血糖かどうか正確に判断するためには、75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)という検査をします。10時間以上絶食した後、空腹時に75gのブドウ糖を飲んで30分・60分・90分・120分後に採血をし、血糖値の変化を測定するものです。” |
血糖値スパイクの症状は食後の急激な眠気?
食後の急な血糖値上昇によってインスリンが過剰に分泌されて起こる症状を説明します。
頭痛
食後血糖値と関連する頭痛には2種類あると言われています。
一つ目は低血糖から引き起こされる頭痛や吐き気です。二つ目は血糖値スパイクによる慢性的な動脈硬化により引き起こされる頭痛です。
眠気・だるさ
急な血糖上昇に対応して過剰に分泌されたインスリンにより、眠気・だるさが感じられることがあります。
気絶
過剰に分泌されたインスリンは、血糖値を急降下させたことで頭痛・眠気・だるさだけでなく低血糖状態になり、意識がもうろうとして気絶してしまうこともあります。
血糖値スパイクは糖尿病予備軍ってホント?
血糖値スパイクは健康診断ではみつからない
健康診断で糖尿病をスクリーニングするために計測するのが「HbA1c」という項目です。HbA1cとは糖化ヘモグロビンのことで、血中の全てのヘモグロビンのうち糖と結合したヘモグロビンの割合を示し、過去1~2か月の血糖値を反映します。HbA1cの基準値は4.3~5.8%で、6.5%以上の場合糖尿病と診断されます(診断項目はHbA1cだけではありません)。過去1~2か月の血糖値を反映、と書いた通り、HbA1cは血糖の一日のなかでの変化、食後の変化などを見るには適していません。食後数時間が経った状態の血糖値は正常値のため「異常なし」と判断されてしまうからです。血糖値スパイクは健康診断ではみつからないために、そのまま症状が進行し、気づかないうちに血管は高血糖のダメージを受けつづけることになってしまいます。
糖尿病とは
糖尿病とは、インスリンが元から作れない、またはインスリンの作用不足により引き起こされる糖代謝の異常を主とする、さまざまな代謝異常の疾患です。高血糖のダメージを受け続けた血管は脆くボロボロになり、全身の細小血管が障害されることで症状が出現します。これを糖尿病性細小血管症といいます。
糖尿病の代表的症状
糖尿病の代表的症状は以下にまとめます。
ご自身や身の回りの人に気になる症状がある場合は、クリニックや病院を受診してください。
口喝 |
今までより、のどの渇きや空腹感がひどくなります |
多飲 |
のどが渇くため、たくさん水分をとるようになります |
多尿 |
たくさん水分をとるため、おしっこの量や回数が増えます |
全身倦怠感 |
全身の疲れがつらくなります |
皮膚症状 |
お肌が乾燥してかゆくなったり、感覚が鈍くなったり、チクチク痛くなったり、傷が治りにくくなります |
糖尿病の三代合併症
糖尿病が進行すると起きる大きな合併症が3つあります。
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進行させないよう、早めの治療が大切です。
健康診断で異常が見つからなくても、ご自身や身の回りの人に気になる症状があればすぐに受診してください。
血糖値スパイクの自己診断・セルフチェックリスト
ここからは血糖値スパイクのセルフチェックをご紹介します。
①BMI25以上
BMIとは、ボディマスインデックスの略です。計算式はこちらです。
体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)=BMI |
BMIが25以上だと血糖値スパイクを起こしている可能性が高いといえます。
②朝ご飯を食べない/3食のうち1食ぬくことが多い
食べない時間が長いほど食後の血糖値は上がりやすくなります。
③週3回以上外食する
外食はどうしても塩分、脂質が多くなりやすいので注意しましょう。
④血縁のある兄弟姉妹・家族・祖父母に糖尿病の人がいる
糖尿病は遺伝的因子があると言われています。また、生活環境が影響することもあります。
⑤1日1食は10分以内に食べ終わる/早食いと言われる
食べる速度が早いと栄養の消化・吸収が早くなるので血糖値は上昇しやすくなります。
⑥食後は動かないことが多い
食後すぐに動くことは食べ物をうまく消化できないのでおすすめしませんが、食事にあまりに動かないでいると、血糖値が下がりにくくなります。
⑦丼・麺類など、炭水化物メインの食事が多い
炭水化物(糖質)が過多の食事は急な血糖値の上昇を招きます。
⑧甘いものやジュース・お酒をよく飲食する
甘いもの、ジュースも糖質が多いので適量を心がけましょう。
⑨野菜・海藻・きのこはあまり食べない
野菜や海藻など食物繊維が多い食べものは血糖値の上昇をゆるやかにしてくれます。
⑩週に3回以上の定期的な運動習慣がない/車移動が多い
運動をして筋肉を使うと、糖をエネルギーに換えるので血糖値を下げる効果があります。
まとめ
10個の項目のうち、あなたはいくつあてはまりましたか。
当てはまる項目が多いほど、血糖値スパイクを起こしている可能性が高いです。気になることがある場合、必要に応じて医師へ相談してみてください。血糖値スパイクとまではいかなくても食後に眠くなったりすることは日常でもあると思いますので、血糖値をうまくコントロールはとても大切です。最後に、血糖値スパイクを起こさない生活習慣をご紹介します。
食事・運動での対策6選
- 朝食もちゃんと食べよう
- 糖質のとりすぎに注意
- 食べる順番に気を付ける
- ゆっくり食べる
- 食物繊維を積極的に
- 食後に軽い運動・日常的な運動習慣を
朝食もちゃんと食べよう
長時間お腹がすいた状態が続いてしまうと、次に食事をした後は血糖値スパイクが起こりやすいです。とくに夕飯から朝食までの時間は、朝食から昼食・昼食から夕食までの時間と比べて長いため、起きて最初の食事のあとは血糖値が急激に上がるポイントになります。朝食を抜いてしまうと、昼食後の急激な血糖値上昇は更に起こりやすく、激しくなります。朝は少しでも寝ていたい、食欲がない、忙しくて自分の食事は後回しにしてしまう人は多いですが、少しでも食べることを心がけてみましょう。
糖質のとりすぎに注意
セルフチェックでも触れましたが、甘いお菓子や料理、ジュースやお酒を飲む習慣はありませんか。疲れやストレスを感じたときはとくに甘いものがほしくなる人は多いです。生理中や生理前はいつもより甘いものがほしくなる人もいます。「糖質制限中のおやつはコレ!市販お菓子の見分け方&簡単レシピ」を参考に、無理なく糖質を摂りすぎない生活を心がけましょう。
また、「糖質」という言葉から砂糖を使った甘いものに注意するイメージは広まっていますが、糖質を多く含む食品は甘いものだけではありません。「糖質制限ダイエット中の食べ物総集編!OK&NG食材を一挙紹介」でも血糖値を上げやすい食品・上げにくい食品を紹介していますので参考にしてください。
食べる順番に気を付ける
1回の食事のなかでも、糖質を多く含む食品を最初に食べると血糖値は上昇しやすいです。何を食べても血糖値は基本的に上がってしまいますが、ご飯・パン・麺類などは後回しにして野菜や汁物から食べることで、急激な血糖値上昇を抑えられます。野菜や汁物、肉や魚を先に意識すると、ご飯やパンや麺を食べるまでにある程度お腹が満たされて、食べる量自体が減る可能性もあります。ベジファースト(野菜を先に食べる)、カーボラスト(糖質を最後に食べる)とも言われる食べ方の工夫を、毎日の習慣にしてみましょう。
ゆっくり食べる
家事や仕事が忙しく、限られた時間で食事をしていたり、急いで食べている人が多いと言われています。しかし、健康にとって「早食い」は非常に危険です。食事を始めてから満腹を感じるには、血糖値の上昇を感知してから15分かかります。満腹中枢が働くと「これ以上食べなくてよい」と体に伝わります。
それまでの15分のあいだに勢いよく食べてしまうことで、食べすぎにつながります。また、よく噛んで食べるとヒスタミン神経系が活性化され、内臓脂肪が燃焼されやすくなります。毎食は難しくても、できるときは1口20回以上噛み、15分以上かけて食事を終えるように時間をとりましょう。
食物繊維を積極的に!
セルフチェック項目に書いた「野菜・海藻・きのこ」は、食物繊維を多く含む食品です。食物繊維が多いと食後の急激な血糖値の上昇を抑える効果があります。吸収に時間がかかると、上昇が穏やかになる様子はイメージしやすいですね。そのなかでも、水溶性食物繊維は糖質の吸収速度を遅らせてくれます。
具体的にはこんにゃく、きのこ類、ワカメ・昆布・ひじき・もずく・めかぶなどの藻類、きなこや小豆などの豆類の摂取を意識しましょう。とはいえ、調理法によっては砂糖を多く入れています。トータルの摂取量にも気を付けてください。白米を雑穀や玄米に置き換える、混ぜることも効果的です。
食後に軽い運動・日常的な運動習慣を
【注意】進行した合併症(増殖性網膜症、糖尿病性腎症Ⅲa期以上)がある糖尿病の場合は運動は禁忌・もしくは慎重に行う必要があります。 |
食後15分ほど経ってから、早足程度の軽い負荷で運動すると血糖値スパイクの予防に効果的です。たとえば朝食の後に早足で少し遠回りして駅まで歩く、ランチのあとに早足で少し散歩をして職場に戻る、夕飯の後に近所を少し速いテンポで散歩する、などは普段の生活に取り入れやすいのではないでしょうか。運動で筋肉を使うと、筋肉が糖を消費するために食後の血糖値上昇の一部を相殺してくれる効果があります。
有酸素運動がイイ理由
有酸素運動を毎日続けていると、筋肉の活動が増えてインスリン抵抗性が改善します。インスリン抵抗性とは、血糖値の上昇が感知されて膵臓からインスリンが分泌されても、筋肉や脂肪組織の感受性が鈍くなっていて、インスリンの効きが低い状態のことです。この状態ではインスリンがせっかく分泌されてもなかなか血糖が下がらなくなってしまいます。有酸素運動を続けるとインスリン抵抗性は改善することが分かっています。ウォーキング、体操、水泳、エアロビクスなどの全身運動をする習慣が身に付くとのぞましいです。
まとめ
テレビや雑誌などで目にする「血糖値スパイク」について説明しました。食習慣と運動習慣はどちらも大切な両輪です。血糖値スパイクがあっても、多くの人は現時点で糖尿病と診断されていません。人生の健康寿命を延ばし、毎日の食事を苦しいものではなく楽しいものとして味わえるよう、急激な血糖値上昇を起こす生活習慣は早めに改善しましょう。